それは必然で。

□わん。
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ムカつく、すげえムカつく。なんかムカつく。とにかくムカつく!
無言でガムを噛みながら頬杖をついて外を見る。気持ち良いくらいに晴れ渡った空。こんな時でも綺麗だなぁって思って。
「あー、くそ…」
こんなに美味しくないガムは初めてだ。
「荒れておるの〜」
「荒れてねー」
俺は棘のある言い方をして仁王に視線を向けた。仁王はわざとらしく肩をすくめ俺の正面に座った。
「原因は赤也たちかの?」
意地悪く仁王は言う。コイツのこーゆーとこ嫌い。
「べっつにー?」
俺は嫌悪感丸出しでガムを膨らませる。そのままなんとなくスマホをいじった。LINEやTwitterからすごい量の通知が。あー、めんどくさい。俺はそれを無視する。
「取られてもしらんよ?」
仁王の真剣な声色に俺は顔を上げる。仁王の目はいつになく真剣で。まっすぐと俺を見据えていた。
「んなコト、わかってるっての」
わかってるから前に進めないんだよぃ。
仁王に見透かされたのがムカついて。俺は保健室でサボるコトにした。保険医の菅原さんに許可を貰いベットに横になる。

なんでこんなにムカついてるんだろ。あれか、ヤキモチってやつ?だとしたらかっこ悪い。こんなのらしくねえ。
ナツミと赤也がどうなろうと俺には関係ない。そうだ、関係ないだろぃ?
自分にそう言い聞かせるようにして目を閉じた。
目を閉じて思い浮かぶのはお菓子。ケーキ。テニス。あとナツミ。
頭ん中グルグル廻って、んで真っ暗になった。うわ、なんだよ。
必死に手を伸ばすがダメだ。どこにも見つからない。

「いつまで寝てんだよばーか」
聞き慣れた声とともに額に小さな痛みが走った。うっすらと目を開けると小さく笑うナツミがいた。
「え、なんで…?」
俺は寝起きで働かない頭をフル回転させて考える。
「もうお昼」
ケラケラと笑いながらナツミは俺に菓子パンを投げた。目の前に落ちるのは購買のメロンパンと焼きそばパン。俺はパンとナツミを交互に見る。
「ほら、食おうぜ」
ニッとナツミは笑いベットに腰を下ろした。ナツミの手にはおっきなクリームパンがあった。
「たく、寝過ぎだってのー」
ナツミはむすっとしながらパンを頬張る。その姿はリスみたいだ。
「別にいいだろぃ?」
俺も焼きそばパンを口に入れる。あ、うまい。思わず頬が緩む。
俺らは他愛ない話をしながらパンを食べた。この時間が凄く幸せだった。

教室に戻り席につくと仁王がまた正面に座った。
「ブンちゃん、顔にやけてるぜよ?」
俺はバッと顔を抑える。その姿を見て仁王はくっくっくっと笑った。もう、こいつやだ…。
「なんかいいコトでもあったのかの〜?」
「ばーか」
俺はそう言ってガムを噛んだ。うん、ガムうまい。
 

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