ペルソナ3 〜未来を照らすエメラルド〜

□Prologue
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ヒーローショーまであと僅かと言う事もありフードコートには人気が無く、子供達の両親がジュースを買いに行っている間、美優たちは子供たちの相手をしていた。

美優はフードコートに置かれている椅子に腰掛け、ベビーカーの赤ちゃんを覗き込んで自分の顔を両手で覆う。


『いないいな〜い…ばぁっ!』

「あばぁ〜…きゃっきゃっ!」

『ふふっ、笑ってくれました!可愛いです〜!』


所謂いないいないばあ、を繰り返し赤ちゃんと遊ぶ美優。

その光景を微笑ましく見つめ、真奈は兄妹の兄の方の相手をしていた。


「うっわぁ〜!すごいすごい!今のどうやったの?もっかいもっかい!!」

『また?…何度目だと思って…』

「おねがい!お〜ね〜が〜い〜!」

『あぁっ、もうっ、わかったよ!』


男の子にせがまれ何度も簡単なマジックを披露する羽目になった真奈だが、その表情は満更でも無さそうだった。

家にまだ小さな《妹》がいる真奈は、子供に好かれると言う事もあり、小さい子供の世話を焼くのが嫌いではないようだ。

これを指摘したり揶揄えば、後でどんな仕返しが来るか分からないので、黙ってニヤニヤ見つめるだけにする芽衣――ザクッ――。


『うわっ!あっぶな!?』


突然自分の顔面ド真ん中に飛んで来たトランプを紙一重で避け、芽衣は投げた人物に声を張り上げる。


『コラーッ!危ないでしょうが!』

『このボクが、標的以外に当てるようなヘマするとでも?』


フンッと鼻を鳴らし、再び男の子の相手に戻った真奈に芽衣は冷や汗を流しながら避けたトランプを振り返る。

自分を見てニヤニヤ笑っていたのが気に食わなかったのか、それとも思考を呼んだのかは分からないが…。


『(ホント、おっかないなぁ〜…)』


フェンスの太い柱に突き刺さったトランプを引っこ抜けば、それは確かに何処にでもある普通のトランプで、どうやったらこんな所に刺さるのかと毎度不思議でしょうがない芽衣だった。


「芽衣ねーちゃん…?」

『んーん!何でもないよん!
さて、何して遊ぶ?』


不思議そうにしている女の子に笑いかけながら訪ねれば、女の子は満面の笑みで小さな手を芽衣に向かって広げた。


「肩車!」

『よし来た!』


ニカッと笑って快諾し、芽衣は女の子をサッとその肩に乗せた。


「ひゃー!たかいたかーい!」

『そうでしょそうでしょー!街もよく見えるでしょー!』


屋上のフェンス近くにいて、芽衣が肩車した事もあり、女の子の瞳には眼下の街がよく見えた。


広くは無く狭くも無い、田舎では無いけど都会でも無い。

少し人と人の《繋がり》が深くなりがちな、そんな不思議だけど温かみのある場所。


此処が、《美優たちの街》だ――。


色々な意味≠ナ騒々しい街だけれど、比較的平和で、楽しい事が多く起こる街。


そんな街の一角で、多くの人の運命が変わる=\―《事件》が起こった。



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