ペルソナ3 〜未来を照らすエメラルド〜

□Prologue
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〜Prologue〜



――現代の日本の何処かに、とある《街》があった。

そこにある老舗デパートの屋上には、小さな観覧車や幼児向けの動物の乗り物などがある遊び場があった。

簡易なフードコートもあり、もう少しでヒーローショーをやるという事もあって、屋上は小さな子供たちとその親でそこそこ賑わっている。


そんな中、小さな男の子が風船を手に持って元気に走っていた。


「あはははっ!」

「おにいちゃーん!まってぇー!」


男の子の後ろには、可愛らしい花柄のワンピースを着た小さな女の子が泣きそうな表情で男の子を追いかけていた。

どうやら兄妹で追いかけっこをしているようだ。


「ははっ!ほら、こっちこっち…わっ!?」

――ドテッ――

「おにいちゃんっ!?」


走りながら後ろを向いた所為で男の子は盛大に転んでしまい、その手から風船の紐がスルリと抜け、空へと登って行ってしまう。

転んだ衝撃と膝を襲う痛み、そして大好きなヒーローがプリントされている赤い風船が飛んで行く光景を呆然と見、男の子はジワリと涙を浮かべた。


「うっ……うぅっ」


するとそこへ、男の子の目の前に白く細い手の平が差し出された。

キョトンと涙を引っ込めてその手を見つめる男の子の前で、何も無かったその手の平が1度閉じられ、また開かれた時――その手に1つの飴玉が転がった。


「わぁっ!?」


突然の魔法のような出来事に興奮した男の子がその飴玉を手に取ると、地面とその小さな身体の間に手が差し込まれた。


――ヒョイッ――

「っ!?」

『男の子なら、簡単に泣くんじゃない』


その声と共に男の子を持ち上げその場に立たせたのは、長い黒髪と青い瞳を持つ絶世の美少女。


「あっ、《真奈》ねーちゃん!」

『はいはい、真奈ねーちゃんですっよ、と。
まったく…勝手に走って行って転んでんじゃないよ…』


途端に嬉しそうに表情を輝かせる男の子に苦笑し、真奈は男の子の服に付いた土埃を叩きながら自身の背後に声を掛けた。


『《芽衣》』

『はいはーい!』


芽衣と呼ばれたのは、長いフワフワの金髪をサイドテールにした赤い瞳を持った快活な笑みを浮かべる美少女。

名を呼ばれただけで何事か理解した芽衣はペロリと自身の唇を舌で舐め、すぐ側にあった階段の手すりに右足を掛け、勢いを付けて跳躍した。


「「わぁっ!?」」


突然のアクロバットに驚いた兄妹に空中でウインクをしながら笑って見せた芽衣は、そのまま空中で身を捻り、天へ登って行こうとした風船の紐をキャッチする。

クルリと体勢を整え、見事地面に着地して見せた芽衣は両腕を広げて上げ、ドヤ顔で兄妹を見下ろした。


『ドヤァ〜!』

「「お、おぉ〜っ!!」」


パチパチと思わす拍手をする兄妹にニカッと笑い、芽衣は手に持った風船を男の子に差し出す。


『はい!』

「あ、ありがとう!芽衣ねーちゃん!」

『今度は離さないように、持ち手を結んどこうね!』


紐の端を輪っか状に結び男の子の手首に通した芽衣は、不意に立ち上がって辺りをキョロキョロと見渡す。

程なく目的の人物を視界に入れ、右手を大きく上げて振った。



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