短期戦

□カミサマのお話
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夢を見ている。
そう断言できんのは、ここが戦場だからだ。
明晰夢っつったっけ?
あーたぶんそれ。
懐かしいっつーか忌まわしいっつーか。
そういうなんとも言えない感情が渦巻く。
目の前には、悪友って言うのも変な、まぁ知り合い?がいた。
ヅラ、辰馬、高杉。
若いころの俺もいる。
ちょうど戦闘中みたいだ。
あ、後ろ…おお、斬った。
なかなかやるなー。
ま、当然だけど。
そうこうしてるうちに終わったらしく、肩で息をしている俺たち。
ん?昔の俺って言ったほうがいいか。
俺が二人いんのもおかしいが、どうやらあっちにはこっちは見えてないらしく、あっちのほうでこっちを見ずに話してる。
あれ、あっちこっち言いすぎてこんがらがった。
会話は…あんま聞こえねぇ。
風呂の中で喋ってるみてーに、全部反響している。
仕方ねえからぼーっとこいつらを見ていた。

(あれ、ここは確か…)

妙な既視感に襲われる。
いや、確かに一回戦ったんだから見覚えはあってもおかしくないんだろうけど。
印象的な、覚えているはずの場所。

(なんかすっごいことが起こったんだっけなー)

腕を組んで脳みそから記憶を呼ぶが、すっからかんの頭は一向に応答しない。
そのまま目を上に向けると、黒い点のようなものが見えた。
それはどんどん大きくなって、増え続ける。

(?……あ、ここってもしかして)

思い当たるものがようやく見つかり、同時になぜ印象的なのか思い出す。

(あいつと会った、初めての場所だ)

点はだんだん形をはっきりさせ、昔の俺たちもそれに気づく。
奇妙なものが、さっき全滅させた天人の援軍だと理解し、焦っていた。
宇宙船は7つ。パラシュートみたいなのにぶら下がって勢いよく降りてくるその数は、7000は下らないだろう。

(こん時はさすがにもう駄目だと思ったな)

残っていたのはほんとにわずかな兵で、逃げ出すやつらもいたはずだ。
それでも最後の砦になってやろうと、この4人は納めていた剣を抜いた。
互いに声をかけ、死ぬなと言いながら。
でも。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



とてつもない音をたてて、奴らの乗っていた宇宙船が、


切れた。

すっぱりと、きれいな断面を俺たちにみせ、落下してくる船。
近いところにいた天人たちは次々に押しつぶされていく。
そんな光景を口を開けたまま見ていたが、このままでは俺たちも、と思ったときには宇宙船は眼前まで迫っていて、
どうすることもできずに、せめてこいつらはと宇宙船に向け剣を構えると。

スパン

とまた、宇宙船が切れた。
俺たちを避けるように残骸が円になって落ちる。
なにがおこったのか理解できず、唖然としたまま周りを見渡す。
天人はほとんど潰されて死に、僅かに生き残っていたのも動くことができていなかった。
混乱して、4人が4人とも何があった?なんて言い合っていると。
そこにアイツが現れたんだ。

「無事でよかったね」

でかい残骸の上を難なく歩き、原型を留めない死体を平然と踏み潰し、この場にそぐわない声音で近づいた、アイツ。
反射で一斉に剣を向けたが、気にせずむかってきたアイツを見て、驚いた。
それは確実に美がつく少女で、なんだかこの場にそぐわない、浮いているような雰囲気を纏ったやつだったから。

「ちょっと道に迷ったんだよ。ここどこか教えてほしいなー」

微笑む姿は背筋を寒くさせるほど妖艶で、二回目の今の俺でさえ呆気にとられた。
ああ、そうだコイツは、

「名前は__そうだな、カミサマ、とでも呼んでよ」




本人の意に反して、後に攘夷志士「魔女」と呼ばれた女との出会いは、少なからず俺の人生に影響を与えた。
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