短期戦

□そしてそこから動き出す
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俺たちはホストだ。
ピンからキリまでの数多の女を喜ばせ、敬い、甘やかし、モノにする。
貢がせむしり取り服従させる、ということもたまにはある(する)が、基本は丁寧安心接客業。
いくら裏のホスト業だとしても、本番有りの事後処理無しだとしても、それがベースだ。
裏のホスト業がいったいなにか、なんて言うまでもない。
男と女が交じり合う、あれだ。


「なになに土方く〜ん。まだ口に出すの恥ずかしいの?」

「うるせぇ腐れ天パ。てめえはさっさと次の客のとこ行きやがれ」

「連れないなー。ひじか「銀時!!新しいお客来たから頼む!」はいよ」


んじゃ、あと5分したらヘルプ頼む、誰がてめえのヘルプにつくか、なんていつもどおりのやり取りをしながら黒服のもとへと走る同僚を見送り、束の間の一服を楽しむ。
苦い味とともにため息を吐き出すと、座っていたパイプ椅子にもたれかかった。
薄暗く光る蛍光灯に手をかざしながら目を細める。



この世界に足を踏み入れてもう随分経つ。
まったくの不本意で入った初めは、嫌悪しかなかった。だが時を重ねるにつれそれも消えた。
残ったのは、気怠い性欲と変化への恐怖。
死んだ親父の借金を返すために、同じ職場で必死になって働いていた兄ももういない。
なんのために生き、なんのために愛を囁き、なんのために動いている?
手っ取り早く稼げると笑った兄に、言えることがあったんじゃないのか?
この仕事を続けなくても、もっとできる仕事が、やれることがあったのでは?
意味もない問いと答えを繰り返すのは飽きた。
兄貴が死んだとき、自分もあとを追おうと本気で思ったのが懐かしい。
___結局、怖気づいてやめたが。
その時のことを思いだし、自分自身を鼻で笑う。
臆病者、と。


「ねみぃ………」


不意に眠気が襲ってくる。
混み合う時間帯になりつつあるが、こればっかりには勝てない。
静かな空間の心地よさに意識を委ねるとしよ___







「お、お客様!?それは一体………」

「おや、聞こえなかったのかい?ではもう一度言おう。





 ___坂田銀時、土方十四郎、沖田総悟。この3人を貰いに来た。金はいくらでもあるから、さっさと連れてきてくれないか」


一昔のように言うと、身請け、といったとこらかな。




そんな声が、聞こえた。
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