ときメモGS4

□ひだるまスパイス
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たまには1人で学食に行ってみますかね、と思いつきで来てみた食堂。

空いている席を探してあちこち見回していると、



「……お」



美奈子の姿が見えた。

ラッキー。
取り巻きがいない。

ぐるっと通路を回って、彼女の前の席に座った。



「よ」
「……ん!」



飲みかけた水を置いてぱっと笑顔になる美奈子。



「七ツ森くん」
「ここ誰か来る?」
「ううん。どうぞ」



まぁ来ても居座るけど等と思いながら机の上を見る。

ほとんど丸々残ったカレーライス。



「……うぅ」



おしぼりで唇を押さえている美奈子。
時折ぱたぱたと手で顔を仰いでいる。



「なに、辛い?ソレ」
「辛い……すごく辛い」



悲しそうに眉を寄せた。

激辛と中辛を間違えられてしまったが申し訳なさから言い出せずそのまま受け取ったらしい。
想像して笑ってしまう。



「笑わないでよ……」
「でも頑張るって感じ?」
「だって勿体な……あ、そうだ。あの」



申し訳なさそうに、いつも以上に七ツ森を見上げる美奈子。

目尻に涙が滲んでいる。



「な、何すか」
「食べてくれないかな」
「それ?」
「辛いの好きでしょ?お願い……見て?これ」



涙目のまま、べ、と軽く舌を出す。
濡れた唇の隙間から、真っ赤になった先端がちろりと見えた。



「……………………ン゛ンッ」
「もう辛い通り越して痛くて……だめ?」



その一瞬で色々な思考や想像がめちゃくちゃに頭の中を駆けたが、目を逸らして唇を引き下げ咳払いをすることで事なきを得た。

セーフ。



「別に、全然、いいですけど……」
「本当!?ありがとう、新しいスプーン取ってくるね、待ってて」



美奈子は席を立ち、カウンターへ向かう。



「……は〜」



残された七ツ森は溜息混じりの声を吐きながら机に肘を乗せ、額に手を当てて俯いた。







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