GS3長編 設楽聖司×お嬢様(完結済)

□お世話になります
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授業が終わり校門を抜けると、見知った車の横に佇む女がいた。
薄く微笑みながら校舎の方を見つめている。
すっと伸びた姿勢は家と変わらない。

その目がこちらに向けられた。
ぱっと彼女の表情が明るくなるのが遠くからでもわかった。

主人を見つけた犬のようにそわそわしだす姿を見て、素直にバカみたいだなと感じた。



「おかえりなさいませ」
「なんでおまえなんだ」
「わたくし免許は持っておりますのよ」
「見たらわかる」



回ってきてドアを開けようとするので手で制す。

いつもの運転手はどうしたと聞きそうになったが、会話したくなくて口を閉じた。



「素敵な制服ですわ。羨ましい限りです」
「そうですね」



鏡越しに顔を見られて、眉間に皺を寄せながら窓の外へ目を逸らした。

……免許持ちだということは、自分より歳上だ。18か19だろうか。















家に戻って親に訴えた。
運転手を戻してくれだとか、あいつは何なんだ、だとか。

必死な頼みにもかかわらず、両親はそれらを笑い飛ばした。

最近父と母の移動が増えてきて、運転手自身もそろそろ落ち着きたい年齢になってきたためそちら専属に回った。
良い子だから仲良くしたらいい。
明るくよく働く素晴らしい人間で、周りからも評判が良い。
……なんて、欲しくない回答ばかりを貰った。

両親はいつもそうだ。
良くも悪くも楽観的で放任主義。


溜息を吐きながら部屋に戻って、また溜息を吐いた。








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