GS3長編 設楽聖司×お嬢様(完結済)

□きまぐれどんどこ
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「……」



ぐるぐるぐるぐる、と。
頭の中に数時間前の映像がループするように流れていた。



「……」



美奈子の顔が浮かぶ。

笑っている表情しか思い出せない。
たまにしょぼくれたり唇を尖らせたりしているが、いつでも彼女は笑っている。



「……」



ヘラヘラと楽しそうなやつだ。



「聖司さま、失礼いたします」
「……」
「あら?」



……そう、こんな顔で。
最初の頃は微塵も興味がなくて殆ど見たことは無かったが、最近では気づいたら眺めてしまう。

やっぱりよく見ると……



「聖司さま、お夕食が」
「……可愛いな」
「川?」



目の前にちょうど考えていた人間が現れたので、呼びかけへの反射的な返事と思考が混同して口が滑った。

頭の中の映像ではなく本物だったことに気づいて驚く。



「うわっ!」
「えっ?あの、開いておりましたので」
「は!?あ、……そうか」



時計を見るとすっかり夜だった。

いつの間に時間が経っていたのだろうか。
……そんなに長く考えていたつもりはなかったのに。



「すぐ行く。あっちいけ」
「はい。承知いたしました」



しっしっ、と払うと、ま!と可笑しそうに笑って去っていった。



「……うわ、……うわ、ッ」



口元を覆って設楽は呻いた。



言葉にしたら、急に一層そう思うようになってしまう。

気づいてしまったら、二度と否定できない。












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