GS3長編 設楽聖司×お嬢様(完結済)

□冬
1ページ/8ページ







季節は変わって冬。

暖房がついているとはいえ手足は寒い。



「おはようございます。聖司さま」



ノックの音と美奈子の声。



「失礼いたします。今日は冷えるそうですわ。先輩に教えていただいてマフラーを編みましたの」



寝ぼけ眼で、彼女がベッド脇にワイシャツとそれを置くのを見た。

……マフラー?



「なんで」
「マフラーを編みましたと申しました。たまにでいいので使っていただけると喜びますわ」



……?



「なんで」
「ちゃんと質のいいカシミヤの毛糸ですのよ」
「いや、そこじゃない……」
「一回やってみたかったのです」



しれっと答える美奈子。

カーテンを開けて、設楽が起き上がるのを確認すると、静かに出口へ向かった。



「失礼いたします」



飽きずに次々と色々仕入れてくるものだ。

今に金槌と鋸を自慢げに掲げて、本棚を作ってみましたの〜と言い出してもおかしくないしもう驚かない。
……いや、流石に驚くか。














外に出ると冷たい風が肌を刺す。



「寒い」



いそいそと車のドアを開けて中へと入った。



「おはようございます。……あら、早速使っていただけるなんて鼻が高くなりすぎてフロントガラスに刺さってしまいますわ」
「ごちゃごちゃとうるさい」



首に巻いたそれを改めて眺める。
ネイビーブルーを基調にして端の方は色が変わっており、雑貨屋に並べてあってもおかしくない程丁寧に作られていた。

どうせ彼女のことだから睡眠時間と多くの毛糸を犠牲に完成させたのだろうと設楽は思う。



「まぁ、よくできてるよ。器用だな、おまえ」
「練習しましたのよ。嬉しいですわ」
「……ありがとう」
「ま!うふふ、ふふ」



肩を揺らして嬉しそうに笑う美奈子。



「冬ってこんなにも寒かったのですね。楽しいです」
「俺は楽しくない」



冬は嫌いだ。








次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ