GS3長編 設楽聖司×お嬢様(完結済)

□秘密
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買い物に行こうと美奈子を探していた。

部屋にいないので下に降りると、キッチンに続く廊下から何か聞こえた。



「……ですの。……、今日も…………夜……。ふふ」



断片的に聞こえた声は彼女のものだ。

覗き込むと、シェフと楽しげに話している姿が見える。



「美奈子」
「はいっ?」



びく、と肩を上げて振り返る美奈子。

ん?と微かに違和感を覚えた。



「……車出せるか?」
「あ、えっと……」



目が泳ぐ。
ちら、と一瞬キッチンの方を見て、口籠った。



「申し訳ございません。今日はちょっと」
「ちょっと、なんだよ」
「ええと……」



つい怒ったような口調で言い返すと、更に困った顔をする。

……仕方ない。
休みの日だし、用事のひとつやふたつあるだろう。
と、自分に言い聞かせた。



「……いや、今のは俺が悪い。じゃあな。また……」



廊下を背にして部屋に戻る。
携帯電話でもう1人の運転手に電話をかけながら、さっきの美奈子の反応を思い出した。


















「最近、川崎と何話してるんだ?」
「川崎さま?」
「……妙に仲良くないか」



車の中で聞いてみた。

最近ちょくちょくキッチン付近でシェフと話し込んでいるのを見かける。
あの日だけではなく。ほとんど毎日どこかで。



「そうでしょうか?」
「……」



あっけらかんとした顔で言うので呆れた。
不満と不機嫌で黙り込む。

空気が変わったのを察したのか、美奈子がそわそわしだした。



「何かわたくし、気に障ることをしましたか?愚図で申し訳ございませんわ」
「してない。何でもないよ」



窓枠に肘をつくと外を眺めた。


このイラつきは何なのだろうか。
知らない。
誰に対してかも。何故なのかもわからない。











「おやすみなさい、聖司さま」



部屋に入って、ふと思いついてドアの近くで耳を澄ませた。

美奈子も部屋に戻る音がする。



「……」



そうして暫くして、今度は小さく扉が開く音がした。

隣。
美奈子の部屋。

……入って寝た振りをして、また外に出ていったということだ。

すぐに歩く足音と階段を降りる音が聞こえて、また設楽は眉間に皺を寄せた。







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