黒子のバスケ

□薬
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「たいがー」
「うおっ、」



 帰ってきた大我に飛び付いて、首に腕をまわしてぎゅうっと抱き寄せた。
 彼はバランスを崩して私に寄り掛かりそうになったけど、一歩で踏み留まる。

 来てたのか、なんて言いながら大我は鞄を落として背中に腕をまわしてくれて、そのままぽんぽんされた。
 背の高くて体格のいい彼は何度抱き締められても気持ちいい。


 ……今私の機嫌がすっごくいいのはお酒を飲んだからってのもあるだろう。
 でもなんだかそれ以上に、誰かに甘やかして欲しかった。

 こうして擦り寄ればそれ相当に応えてくれる人がいるのはとっても幸せなことだと思う。



「飲むなよ16歳」
「えへー」
「奥行かせてくれ」
「やだ」
「……この、」
「きゃー」



 やんわり解かされそうになった腕に更に力を込めれば、仕方ないといった顔をした大我に抱き上げられた。
 靴を脱ぎながらも器用に膝裏と背中をしっかり支えてくれて、その力強さに自然と笑いが込み上げる。

 自分でも思うくらいだらしない笑みを浮かべたまま、私は彼により近付いた。
 胸板に頬を寄せて、大我を見上げればばっちり目が合ってまた笑った。


 いつの間に着いたのかふかふか反発するソファに寝かせてくれて、シャワー浴びてくるから、なんて離そうとしてくる。
 それを止めようとして駄目、って言ったはずなのに思ったより舌っ足らずな声になった。



「だぁめ」
「汗かいてんだよ。臭ェだろ」
「えー、じゃあいっしょに入ろ?」
「……っ」



 私を見下げる目が揺らぐ。
 耳が赤くなってるのは運動後だからって訳じゃないだろう。


 とどめとばかりにジャージの衿を掴んで引き寄せる。
 かさついて熱いそれに唇を重ねた。

 ちゅう、ともっと押し付けて吸ってみると、スポーツドリンクの味がする。
 軽く開いた口をこじ開けて、奥に引っ込んでる大我の舌を突っついた。
 ぺろぺろ絡めて口の端から溢れた唾液を舐め取ると、じゅるって変な音。


 ジャージを離しても、大我の顔は近いままだった。
 飛び退かれたらそれはそれでショックだけど、そんなこと有り得ないってわかってた。

 ……確かに今の彼はいつもよりずっと濃い匂いがする。
 別に汗くさいとかそういう訳じゃなくてもっとこう、雄みたいな色っぽい匂いだ。

 はぁ、と吐いた息は熱くて、何かを我慢してるみたいな色っぽい表情にもくらくらした。



「お前、何言ってるか分かってんのか?」



 最終確認。

 待ってたよとばかりに頷くと大我は呆れたような、でもちょっと吹っ切れたような笑みを浮かべた。
 それから私を押し潰すように一度ぎゅぅっと抱き締めてくれて、また抱き上げる。

 まだ明かりのついてないお風呂場が呆れたように私たちを待ってる気がした。









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