黒子のバスケ

□報復
1ページ/1ページ






「私ね、テッちゃんと結婚したいんだぁ」
「……は?」



 長々話しまくる名無しさんの話を受け流しつつ聞いていたら、不意にそんなことを言われて俺の思考はフリーズした。



 ケッコン?
 けっこん、……血痕?いや、結婚だな。

 は?
 こいつ何言ってんの?



「ずーっと頑張ってるのに中々振り向いてもらえないの」
「へ、へー」



 あれ?
 こいつって俺の彼女だよな?
 あっれぇ?


 いや、つーかテッちゃん?って誰だよ。
 
 テッちゃん……テツ?
 黒子テツヤ?
 あと木吉鉄平もテツか。
 
 
 いやいや。
 いやいやいやいや。



「でね、こないだテッちゃんがね」
「お、おう」
「デートで可愛い系のピンク色着ていったら似合わねーよばーかみたいなこと言ってきたの」
「……おう」
「ひどいよね。順平にだってそんなこと言われたことないのに」
「…………おー」



 え、まだ続ける?
 俺の前でその話まだする?

 あれ、こいつこんな奴だっけ?

 似合わねーよばーか?
 黒子にしろ木吉にしろそんな言い方するか?

 え、もしかして俺の知らない奴?



 ぐるぐるぐるぐる。
 頭の中で色々浮かんで消える考えを必死に振り払う。

 俺の脳内とは打って変わって名無しさんは楽しそうだ。



「でもやっぱりかっこいいんだよ〜。声があの武将キャラと同じ声優さんでね、えっと誰だっけ」
「ん?」



 ……キャラ?声優?



「あーすまん、何の話?」
「私が今してる乙女ゲームの話だよ。……もしかして聞いてなかった?」
「い、いやいやいや聞いてた聞いてた超聞いてた」



 これは。
 ……どう考えても俺が悪い、か。
 
 あーでも何か、あれだ。
 イラッとした。



「きゃっ」
「はー……ねーわ、ったく」



 立ち止まった俺を振り返る名無しさんを引き寄せる。
 んで、抱き締めるわけでなく、脳天にチョップ。

 ぎゃん、なんて可愛くない声と共に名無しさんが頭を抑えて沈んだ。


 
「痛い……理不尽。なんでちょっぷ」
「黙れ」



 構わず歩けば後ろから恨めしそうな声が聞こえる。

 振り返ると涙目で唇を尖らせたまま俺を睨んでた。
 全然怖くねー。  



「順平のだほ」
「違ぇ。ダァホ」
「どあほう」
「それスラムダンク」
「だーほ」
「ダァホ」
「だぁーほ」
「ダァホ」
「ダァホ」
「それ。……つーか何の話だっけ」
「あ、それでねあのねっ」











.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ