黒子のバスケ
□報復
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「私ね、テッちゃんと結婚したいんだぁ」
「……は?」
長々話しまくる名無しさんの話を受け流しつつ聞いていたら、不意にそんなことを言われて俺の思考はフリーズした。
ケッコン?
けっこん、……血痕?いや、結婚だな。
は?
こいつ何言ってんの?
「ずーっと頑張ってるのに中々振り向いてもらえないの」
「へ、へー」
あれ?
こいつって俺の彼女だよな?
あっれぇ?
いや、つーかテッちゃん?って誰だよ。
テッちゃん……テツ?
黒子テツヤ?
あと木吉鉄平もテツか。
いやいや。
いやいやいやいや。
「でね、こないだテッちゃんがね」
「お、おう」
「デートで可愛い系のピンク色着ていったら似合わねーよばーかみたいなこと言ってきたの」
「……おう」
「ひどいよね。順平にだってそんなこと言われたことないのに」
「…………おー」
え、まだ続ける?
俺の前でその話まだする?
あれ、こいつこんな奴だっけ?
似合わねーよばーか?
黒子にしろ木吉にしろそんな言い方するか?
え、もしかして俺の知らない奴?
ぐるぐるぐるぐる。
頭の中で色々浮かんで消える考えを必死に振り払う。
俺の脳内とは打って変わって名無しさんは楽しそうだ。
「でもやっぱりかっこいいんだよ〜。声があの武将キャラと同じ声優さんでね、えっと誰だっけ」
「ん?」
……キャラ?声優?
「あーすまん、何の話?」
「私が今してる乙女ゲームの話だよ。……もしかして聞いてなかった?」
「い、いやいやいや聞いてた聞いてた超聞いてた」
これは。
……どう考えても俺が悪い、か。
あーでも何か、あれだ。
イラッとした。
「きゃっ」
「はー……ねーわ、ったく」
立ち止まった俺を振り返る名無しさんを引き寄せる。
んで、抱き締めるわけでなく、脳天にチョップ。
ぎゃん、なんて可愛くない声と共に名無しさんが頭を抑えて沈んだ。
「痛い……理不尽。なんでちょっぷ」
「黙れ」
構わず歩けば後ろから恨めしそうな声が聞こえる。
振り返ると涙目で唇を尖らせたまま俺を睨んでた。
全然怖くねー。
「順平のだほ」
「違ぇ。ダァホ」
「どあほう」
「それスラムダンク」
「だーほ」
「ダァホ」
「だぁーほ」
「ダァホ」
「ダァホ」
「それ。……つーか何の話だっけ」
「あ、それでねあのねっ」
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