黒子のバスケ
□堪能
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大きな手がお尻をぺちんっと軽く叩いて、そのまま鷲掴んだ。
骨ばった男らしい指や広い掌にきゅんとして、つい下腹部に力が入る。
「う、おっ」
「え?」
「…すまん、何でもない」
嘘。
これされると辛そうな顔するの知ってる。我慢するみたいに眉が寄って、視線を逸らしながらふぅって息を吐く。それが意識を散らそうとする為なんだって気付いたのはつい最近だけど。
何度も回数を重ねるうちに余裕が出てきて相手を観察できるようになってようやく見つけた、私にできることだ。やめられる筈がない。
もう一度、掴まれたお尻の辺りに力を込める。
ぎゅぅっと中が締まって、鉄平がまた驚いたみたいな顔をした。
「名無しさんそれわざとやっ、て…っ、」
「だめ、こっち見て」
「…出ちまうぞ?」
はっ、と荒い息混じりに鉄平が訊いてくる。真面目な顔なのが逆に間抜けだ。
同棲し始めてから数ヶ月、結婚してない限りは子供なんて作れない。
でもこういうのは毎日毎日繰り返してるからいつしか思い至ったのは薬の服用だ。
性欲の塊みたいなこの人の相手をしてたら、それでも妊娠しちゃうんじゃないかと思っちゃうんだけど。
目にかかる高校時代よりちょっと長くなった前髪を指で払う。少しばかり湿ってたのはまぁいい。
そのまま頬にまで移動して、両手で鉄平の顔を挟み込んだ。
「いいの。…奥、いっぱい出して」
「……………」
こつんとおでこをぶつけながら間近で言うと、鉄平はフリーズした。
きょとんとした目が私を見たまま止まるから外したかななんて心配になったけど、どうもそうじゃないらしい。
次の瞬間、でれでれっとした笑顔を満面に浮かべた鉄平に思い切り抱き締められた。
「ぐぇっ」
「名無しさんちゃんにそう言われちゃ仕方ないな!覚悟しとけ!」
「〜!〜〜〜!!!」
「ん?あぁ、すまん」
厚い胸板に顔が押し付けられて潰されそうになった。…こいつはあまり自分の体格を考えてない。
べしべし二の腕を叩いて抗議してやっと離してくれる。
それでも身体はくっついたまま。
鉄平はキラキラした表情のまま何度も私に唇を落として、また潰されるかと思うくらい私を強く抱き締めた。
苦しいけど死にそうな程でもないし、挑発は成功。
ただ、ちょっとばかし長く翻弄されそうだ。
「んじゃ行くぞー」
「ッぅあ、ぁあっ!んんぅっ、ふ、」
間抜けな声と共にがつん、と奥まで一突きされて、喉の奥が震える。
無理矢理押し出されるみたいに発した上擦った声は直後鉄平に吸い込まれた。
舌に割られるがまま唇を開けば、項の辺りからぞくぞくしたものが這い上がる。
あぁ、気持ちいい。
擦られて一番奥を押し上げられて込み上げる快感は一人じゃ味わえない。
あれだけ痛い痛いって泣いて喚いた時もあったのに、いつの間にか身体は鉄平に作り替えられてしまった。
今じゃ自分から誘うことだってあるんだから、順応って怖い。
「は、ぁう、ちょっと、待っ、…鉄平っ」
中をごりごりと擦られる感覚に絶えず腰がふわついて、引こうとしても余計に抱き寄せられた。それで一層密着して奥にこつんこつんって当たるのが堪らなく気持ちいいけど、お腹を押し上げる圧迫感は苦しくもある。
息が詰まりそうで、それでも唇を重ねるせいで呼吸も儘ならない。
酸欠。
頭がくらくらしてきた。
なのにこのばかは、
「気持ちいいか?」
「ッちが、やだっ、もっとやさしくっんぅ、はぁッ、」
「おー、泣くな泣くな、っ」
…なんてまた口づけながら揺さぶってくるのだ。
たちが悪い。
気付いてないし。
でも、好き。
「っ!…ぁ、鉄平、そこ、きもちいぃ…!」
息苦しいままにびりびりした性感を訴えれば、いつものだらしない種類じゃない笑みが返ってくる。
愛おしそうな優しい顔。
そんな目で見られたらもっと奥が疼いて、背中がぞわぞわしてくる。
してるときの鉄平の色っぽい表情は好きだけど、どきどきするから嫌だ。
もっと好きになって心臓がうるさくなって、自分でも無意識に後から思い出すと恥ずかしいような台詞だって言ってしまう。
それは私の中のスイッチのようなもので、一度入ると中々切り替わってくれない。
でもそれを押してるのが鉄平だっていうのがちょっと悔しくもある。
気持ちいいと言ったところをぐりぐり刺激されて、身体は歓喜に満ち溢れた。
背中を反らすと、晒された首筋に吸い付かれる。
べろっと舐めてちゅうちゅう吸われると、まるで犬になつかれてるみたいだ。
…こんなでっかい犬は大変そうだけど。
「お、っ?」
「んちゅ、…ぷぁ」
首に顔を埋めたままの鉄平に抱き着いて、引き寄せる。
耳にちゅうっと吸い付いて、それから同じように首に唇を這わせた。
驚いた鉄平がひくっと震えて笑ってしまう。
ちょっと昔までやたらと付けたがった痕は、最近じゃ色々あって見える場所には控えるようになってたけど。今日はなんとなく、思いっきりつけてやりたくなった。
いつもは吸い付いても甘噛程度のそれを、きつく。
ぢゅぅう、なんてえっちぃ音。
もっと凄いこと下の方でもしてるのに、なんだかすごくどきどきする。
「こら、付けたな?」
びっくりした表情のまま鉄平が言う。
私はうん、って答えて、それから付けたばっかりのそれをなぞった。
鉄平は暫し考え込むみたいにじぃっと私を見て、それから一転晴れやかな笑顔を浮かべる。
そして、私の頭をぽふぽふと叩いたかと思うと首に顔を寄せてきた。
「あっ、ぁん」
同時に襲ってきた甘い痺れに声が漏れる。
ぐりぐりと子宮口を抉じ開けるような動き。腰が砕けそうだ。
そこにもうすぐ直接精液が注がれるかと思うと、ぞくぞくして余計に興奮してしまう。
「よーしいっぱい付いた」
「ふぇ、ちょっと待ってぇ、っ、いっぱい…?」
「このまま外歩けないかもな!」
「鉄平、ばか、…っひぁ」
ああもう、好き。
私もばかみたいだ。
「きもちぃ、っぁう、あああ」
「名無しさん、っ名無しさん、ッ」
指ごと強く絡め取られる。
覆い被さってくる胸板に乳首が擦れてじんわり気持ちいい。
私の中は鉄平のものを奥までくわえ込んで、自然ときゅうきゅう締め付けてるのがわかった。
根元が擦れて、陰核も押し潰される。
「鉄平、っ鉄平いっちゃぅ、やぁ、あ、っぅあ、」
腰から背中を這う快感が弾けるみたいに、頭が真っ白になる。
目の前がちかちかして、息ができない。
「鉄平すきぃっ、てっぺ、ぁ、ひ、ぁ、あ――ッ!!」
それからびくんっ、と一度大きく身体が跳ねた。
背中が反れて、口から訳のわからない声ばっかりが自然と出てしまう。
ひくん、ひくん、と何度もちっちゃく痙攣して、快楽の波が引いていった。
遅れて中で脈打つ感覚がして、同時に奥に熱いものを感じる。
鉄平が肩を震わせてそれでもまだ腰を押し付けてくるから、霞みかけた意識が甘く戻ってきた。
「はぁ…っそれやだぁ、奥じんじんする…」
「なぁ名無しさん」
「?」
潰されると思うくらい強い力で私を抱き締めた鉄平が真面目な顔で言う。
下はまだ根元までくわえ込んだままで、出したはずなのにそれは依然硬いままだった。
…もしかして。
さぁぁっと血の気が引いていく。
「一回じゃいっぱいって言わない…よな」
「ッ、待っ」
「無理だ!ほら、腕まわせ」
「ひゃ、だめ、ぁ――!!」
キラキラした憎たらしい笑顔で唇を落とされて、無理矢理掴まれた腕は鉄平の首にまわる。
…ばかだけど、好き。
ああもう、知らない!
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