PSYCHO-PASS
□希望的寒測
1ページ/1ページ
ぶる、と背筋が震えた。
「……ハァ」
吐く息は白い。
監視官である私と執行官である狡噛さんは捜査に駆り出され、車で数十分の距離にある現場へと向かっていた。自動操縦に任せているものの、気は抜けない。私はじっと前を見詰め、狡噛さんの方も時折前を見る以外は窓の外へ視線を投げている。
気まずいとは思ったことがない。お互い人とは常に会話しなくても耐えられる性格の為か、無言でも構わない性質だ。特別仲が良いという訳でもないけど、人並みに話しているつもり。
もっと仲良くなりたい、とは思うけど。
いや、それはいいとして。
「……っ」
再度ぶるりと震える。
寒い。とにかく寒い。
季節はとっくに冬の暦に入り、時々ちらつく雪は趣があって眼福の一言だ。しかしそれ故に下がる気温は誤魔化せない。
今日は特に寒いという訳でもなく暖房をつけるほどでもないが、冷える手足はじわじわと私の体温を奪っていくのである。
狡噛さんは平気な顔で動かない為、余計に自分だけ暖まろうとは言えなかった。
ハァ、ともう一度白い息をついて狡噛さんを見る。
目が合った。
「わ、わっ!」
どくんと心臓がはねて、目が泳いでしまう。反応として0点だ。観念して狡噛さんを見上げる。
「ご、ごめんなさい、えと」
「顔色悪いぞ」
「――」
すっと狡噛さんの指が私の頬を一瞬だけ撫でて、そのまま二人の間、エアコンのスイッチに伸びた。私が躊躇しまくっていたそれを簡単につけてしまう。ごぉお、と空気音が響いて、温風が車内に吹き抜ける。
寒いなら言え、と信じられないくらい優しい声で彼は言って、それからまたすぐに窓の外を見てしまった。
……どうしよう、熱くなってきた。
.