PSYCHO-PASS

□希望的寒測
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 ぶる、と背筋が震えた。


「……ハァ」


 吐く息は白い。

 監視官である私と執行官である狡噛さんは捜査に駆り出され、車で数十分の距離にある現場へと向かっていた。自動操縦に任せているものの、気は抜けない。私はじっと前を見詰め、狡噛さんの方も時折前を見る以外は窓の外へ視線を投げている。
 気まずいとは思ったことがない。お互い人とは常に会話しなくても耐えられる性格の為か、無言でも構わない性質だ。特別仲が良いという訳でもないけど、人並みに話しているつもり。
 もっと仲良くなりたい、とは思うけど。

 いや、それはいいとして。


「……っ」


 再度ぶるりと震える。

 寒い。とにかく寒い。

 季節はとっくに冬の暦に入り、時々ちらつく雪は趣があって眼福の一言だ。しかしそれ故に下がる気温は誤魔化せない。
 今日は特に寒いという訳でもなく暖房をつけるほどでもないが、冷える手足はじわじわと私の体温を奪っていくのである。
 
 狡噛さんは平気な顔で動かない為、余計に自分だけ暖まろうとは言えなかった。

 ハァ、ともう一度白い息をついて狡噛さんを見る。
 目が合った。


「わ、わっ!」


 どくんと心臓がはねて、目が泳いでしまう。反応として0点だ。観念して狡噛さんを見上げる。


「ご、ごめんなさい、えと」
「顔色悪いぞ」
「――」


 すっと狡噛さんの指が私の頬を一瞬だけ撫でて、そのまま二人の間、エアコンのスイッチに伸びた。私が躊躇しまくっていたそれを簡単につけてしまう。ごぉお、と空気音が響いて、温風が車内に吹き抜ける。
 寒いなら言え、と信じられないくらい優しい声で彼は言って、それからまたすぐに窓の外を見てしまった。

 ……どうしよう、熱くなってきた。








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