PSYCHO-PASS
□死ねばいいのに
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『監視官権限により、ロックを解除します』
ドアが開く。
他人の匂い。
誰かの生活に足を踏み入れる感覚。
ドアが閉まり、音のない部屋に閉じ込められる。
窓に映るホログラムが鈍く床を照り返していた。
「……」
奥へ進んでも姿が見えない。
眉間を更に寄せて、ずかずかと寝室へ上がり込んだ。
「名無しさん」
案の定布団が膨らんでいて、頭まで被り込んだ彼女の髪が枕に流れている。
声は届いていないようで、微動だにしないまま。
枕元に手をついて揺さぶるが、規則的な寝息の他に動くものがない。
チッ、と舌打ちと共に布団の端を掴んで剥ぎ取った。
「──、」
と同時に、布団を持ったのと逆の手首を握られてバランスを崩す。
ベッドに倒れこむと引っ張られ、思い切り押し付けられたのと同時に寝ていた彼女が飛び起きる。
腹部に跨られた上に眠そうな顔で見つめられていて、重い溜息をつくほかなかった。
「……あれ、?」
ゆっくりと瞬きをする名無しさんが彼の顔を見て、髪を掻く。
「おい」
腹が立ち、半ば蹴り飛ばすように彼女を引き剥がした。
突き離された勢いでその隣に寝転ぶと、名無しさんは思い出したように笑う。
「そっか、あは、すみません、ちょっと待っててください」
気怠そうに起き上がると、手首の端末を弄って電気をつける。
壁際の照明が薄暗く光った。
スリッパのぱたぱたという音が遠ざかっていくのを聞きながら、溜息をついて額を押さえる。
「……クソ」
起きてネクタイの歪みを直しながら、辺りを見渡した。
相変わらず殺風景なレイアウトで、且つ散らかっている。
脱ぎ散らかしたジャケットや飲み残したプラカップ、サプリの瓶、酒の空き缶。
「あんまり見ないでもらえます?」
ドアの向こう側に立った名無しさんが歯ブラシを銜えながら呆れたような声をかけてきた。
「片付いてたら見ないがな」
「休みがあれば散らかりませんけどね」
嫌味っぽく笑うと肩を竦め、引っ込む。
フン、と鼻を鳴らした。
赤く充血し、ぐずぐずに蕩けきったところに突き入れられて、かはっ、と息が漏れる。
すぐに内臓を殴られたような異物感と、腰からぞわぞわしたものが這い上がってきた。
「あ、ぁあ、ううう」
ベッドに突っ伏した名無しさんが呻く。
枕に顔を埋めて、綺麗に整え伸ばした爪をシーツに突き立てていた。
痛いくらいに締め付けられた宜野座が顔を顰め、チッ、と舌を打つ。
「ぁは、っ、はあ、あっ!」
後ろ髪を掴まれて持ち上げられた。
背を反らして上半身を起こすと、両腕を纏められて後ろで捉えられ、肩の痛みから逃げるように膝を立て直す。
髪ごと引き上げられた頭もじんじんと痺れ、脳を揺さ振られる感覚がした。
食い付いてくる柔らかい粘膜を剥がすように引き抜き、突き入れる。
名無しさんが濁った声を上げた。
「あ゛、っは、もっと、もっとして、っ」
天井を仰いだままぐりぐりと捻るように腰をうねらせて、意図的に中を締め付ける名無しさん。
潤んだ目を細めると、吐息で笑った。
ぐ、と宜野座が唸り、また舌打ちした。
憎悪の表情を浮かべて唇を噛み締める。
内側から腹部を殴るように腰を打ち付けると、歓喜の嬌声が上がった。
張り詰め、腫れ上がった肉茎がごりごりと膣穴をを擦り、押し潰す。
「ひ、っく、あは、はっ、気持ちいい?ねぇ、」
どろりと濁った目を左後ろへ向けた。
頭を掴まれていては勿論視線は合わないが、充分だった。
「軽蔑してるのに、嫌いなのにっ、呼ばれたらほいほい来ちゃうもんねっ?あは、ぁははは」
「……っ」
「っふ、やめたいのにおちんちんに逆らえないんでしょ、えっち気持ちいいもんね、あっ、」
可笑しくて堪らないように身体を震わせる名無しさん。
喉を鳴らしながら息を漏らして、時折甘い声を上げる。
「変態」
「……黙れ」
冷たい声が肩口で聞こえた途端、髪も腕も解放された。
一気に離された反動で上半身がベッドに倒れ込む。
が、宜野座が名無しさんの首を掴み、その指をぎりぎりと食い込ませて引き留めた。
がくん、と身体が無理矢理吊られて、頸椎が軋む。
「ふは……流石にしぬ、って」
「死ね」
「りょうかい、えっちおわってからでいい?あは、」
「……クソ、ッ!」
血液も酸素もせき止められて、名無しさんの意識が宙に放り出される。
徐々に声も出なくなる。
下腹部の痺れと、流れる汗と、宜野座の指の感覚がやけに増長されているように感じた。
何度も何度も肉茎が中を往復して、ずりずり擦り合わされて。
視界が赤と黒に点滅しだした頃、腰から這い上がってきた震えがぱちんと弾けた。
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