PSYCHO-PASS

□成長期
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ティッシュ、ヨシ!
コーヒーの発注、ヨシ!
モニターの予備バッテリー、ヨシ!

あ、狡噛さんの煙草もヨシ!
灰皿もキレイキレイ。


朝一の仕事も一段落し、暇を持て余してふざけながら事務用品の在庫など確認していた時だった。

宜野座さんが何となく気まずそうに眼鏡を上げながら近寄ってきて、こそっと囁いてくる。



「名無しさん。あれを何とかできないか」
「あれ?」
「……縢」



ああ、と納得する。

先日うちに配属された新人執行官。
幼少期から矯正施設にぶち込まれていたらしい哀れな男の子。


なんというか、一言で表すと、



「尖ってるよねー」
「ねーじゃないだろ教育係」



溜息交じりに頭を人差し指の第2関節で小突かれる。


彼はよくいる反抗的な若者だった。

仕事には支障はないというか、まだ教育段階なのだけど、そこまでサボったり暴力的というわけじゃない。
でも、周りの空気がピリつく部類の態度の悪さ、というか。
つーん、としている感じ、というか。


宜野座さん、とりあえず厳しい指導以外はできないもんね。



「いいんですか?」
「何がだ」
「宜野座さん的におっけーなら、……やるけど」



正直、理由はわかっていた。

でも別に私じゃなくてもいいかなって思ってた。


ちょっと不安で、見上げながら聞く。

みなまで言わない私を見て、宜野座さんは眉を寄せながら目を逸らした。
嫌な予感でもさせてしまったのだろうか。



「……法は守れよ」



と、言われてしまってはやるしかない。











「あ、っちょい、待、〜〜〜ッ!!」



声にならない悲鳴を押し殺しながら、ベッドを叩いて暴れ回る。

彼の太腿に腕を回して抱き込んだまま、にちゃにちゃと動かしていた手を止めた。



「そんな我慢しなくていいのに」
「……ぐぅう」



やはり彼はいとも簡単に釣れてくれた。

夜、部屋に呼び込んで、ちょっと抱き着いて、ちょこーっとそういう雰囲気に持っていったらクリア。



歯を食い縛る縢くんがチッと舌を打ち、悔しそうに見下ろしてくる。



「ずりぃな」



ん?と目線を上げるより先に脇を抱えられ、引き上げられた。
そのまま倒れこむ彼に覆い被さると、後頭部を掴まれて口付けられる。
噛み付くように唇を吸われ、思わず笑った。



「いたい」
「うるせぇ、アンタも脱げよ」
「私はいい」
「よくねぇの」



抱き締められるように腕が回されて、腰に下りた手がワイシャツの中に差し込まれる。
脇腹を掴み、するすると撫でながら上って来たかと思うと、背中の辺りで止まった。



「……これどーやんの」



とんとん、と留め具をつつかれる。



「ぶは、……ぁは、っふ」
「笑うな」
「ごめん、く、ふふふ、かわいい、あは、きゃっ!?」



持ち上げられたかと思うと寝転がっていた。
いつの間にか上にいる縢くんが青筋を立てて笑っている。



「童貞狩り楽しいか?なぁ」



嘲るようなその綺麗な顔に、



「うん。楽しいよ」
「ムッカつく……!」
「あ、ばか」



鼻で笑った彼がワイシャツの隙間に両手の指をかけ、そのまま左右に引き千切った。
ボタンの糸が切れ、ぶちぶちと落ちる。

露出した下着を上に引き上げたところで、うっ、と一瞬止まった。



「……」



固定するものがたくし上げられて、胸が下に押し寄せられている。
私からは髪しか見えないけど、彼の目がそれに釘付けになっているのがわかった。
想像通りの反応にまた笑いが込み上げてくるが、ここは堪える。

代わりに、縢くんの頭を撫でて言った。



「好きにしていいよ?」
「―――」



ぴく、と気づいたように彼の手が動く。

睨むように私を見上げて、口角を上げた。



「あっ、」



唐突に胸を鷲掴まれる。



「なぁ」



縢くんのもう片方の手が私の顎を持ち上げた。



「俺わかんねーから教えてよ。先輩」



悪戯っぽいその目に、挑発的な光がちらつく。



「どこ?」
「どこ、って」
「このへん?」



べ、と出した舌が肌を舐める。
両胸の間をぬるぬるしたものが蠢いて、吐息が生温く心臓をなぞる。

そのまま鷲掴んだ片方にするするとスライドして、合間に口付けながら撫でていった。

疼く先端には触れてくれなくて、彼の言葉の意味を理解する。



「意地悪」
「どっちが。……で、どこ?」



舌を押し付けて揺するようにべろべろと舐め取られる。

熱い舌は硬く充血した中心を上手く避けて円を描いて、わざと音を立てて口づけて離してきた。



「違う……」
「うん」
「先っぽがいい」
「これ?」



ふっ、と息をかけられる。

悪知恵が働く人だということがわかった。
……なかなか、見込みのある新人だと思う。



「……乳首、じんじんするの……いっぱい舐めて?」
「っ」



だから私も急いていくことにした。

彼がお腹に擦り付けてくるものを逆に押し返す。
腰に手を回して、自分に引き寄せた。



「あ、ちょ」
「ねぇ、早く早く」



ごりごり鳴りそうなくらい硬くて、不覚にも熱い息が漏れる。

結構、良いかもしれない。


下着の上から爪で引っ掻く。



「……何それ、ドエロ」



ふは、と荒い息に唇を食べられた。
擦り合わされる粘膜に、舌の根からぽわぽわと頭に熱が昇ってくる。


スカートの裾から潜り込んできた手が太腿を掴んで、性急にストッキングと下着をまとめて引き下げた。











「はよーざいまーっす」
「…………ああ、おはよう」



翌朝。
いつも通り気怠そうに、だが紛れもなく浮ついた雰囲気の縢くんに一同目を丸くした。

珍しく挨拶までしてオフィスに入ってきた彼を見て、すぐさま宜野座さんが私にすたすたと歩いてきて耳打ちする。



「何したんだ」
「え?」
「おかしいだろ」
「宜野座さんもあんな感じでしたけどね」
「──」



げほげほとわざとらしく咳き込む同僚に、堪らず笑った。






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