GS2 × GS3長編(完結済)

□出会い
1ページ/9ページ








一流大学キャンパス。

授業を終えて外に出ると、冬の始まりの冷気に包まれた。
日は落ちかけて、空は青いのに建物はみんなオレンジ色になっている。

マフラーを首に巻きながら歩いていた。

すると。



「若王子先生!」
「小波さん」



知った顔を見かけて思わず駆け寄る。



「こんにちは……?」



隣に知らない顔。

紺色のブレザー。
ネクタイなし。
片目を隠すように伸ばした色素の薄い金髪。
猫背ぎみの姿勢で鞄を肩に引っ掛けている。

……この制服、どこだっけ?



「ああ。えーと……知り合いの紹介で。はば学の生徒さん」
「あ、見たことある制服だと思いました。はば学か」
「君の3つ下になるのかな?」



キャンパス見学なのか、先生に用があるのかはわからないけど。

眠そうな目がわたしを見た。
一瞬、びっくりした顔になる。



「はじめまして。小波美奈子です。若王子先生は高校の担任で」
「……。どうも」
「桜井琉夏くんです」
「桜井くん。どうも」



話を聞いてみると、いつもは高校で会っているらしい。
今日は大学でお喋りだそうで。
よくわからないけど、先生には何か思惑があるんだろう。いつものこと。



「君も一緒に話さない?」
「いいんですか?」
「もちろん。授業はまだある?」
「終わったところです」
「よかった」



中央の広場を抜けて、研究室の集まった建物に入る。

若王子と書かれた部屋の前でわたし達は止まった。



「ええと……ちょっと待っててください。荷物を取ってきます」



ぴ、と首にかけたカードをセキュリティにかざして入室していく背中を見送って、振り返った。

きょろきょろと遠くを見回していた彼がわたしを見る。
猫背なせいで、彼の方が背が高いのに覗き込まれている。
観察されてるような気になった。何かついてる?



「若王子先生は良い人だよ。ちょっと変わってるけど」
「……うん、知ってる」
「どうして先生と?」
「……」
「……?」
「ヒムロッチが言うから?俺もわかんない。いつもは教室で問題解くだけだったから」
「はば学の先生?なんか聞いたことあるかも……」



……口数は多くない。
考えながら喋っている感じ。



「問題を解くって?うちの理系に来るの?」
「……どうだろ」



わかんない、と言う。

そんなにオープンな子じゃなさそうだ。
最初は当たり障りのない話題……と。



「はば学楽しい?」
「……アンタに似てる子がいる」
「わたしに?」
「うん。幼なじみだった」
「……だった?」
「顔似てる。カワイイんだ」
「へぇ。好きなの?」
「好きだよ。……よく笑うから」
「素敵だね?」



急に饒舌だ。
……好きな子がいるのか。

にしては何となく悲しそうだ。
辛そうに唇が動く。
亡くなったとかそういうのじゃなくて、なんというか……。


考えていると、ふっと彼の肩から力が抜けた。



「今日、単車で来たんだ。ドライブする?」
「か、カッコいいね……」
「アンタと話してる方が楽しそう。今から行こうよ」



はば学って、赤城くんの高校だよね?
イメージとけっこう……かなり違うかも。

でも若王子先生に紹介されるくらいだからきっと頭がいい。

頭はいいけど、どこか浮いてる。そんな感じがする。


急に距離を詰めてきた彼から一歩退いて、わたしは笑った。



「ダメ。今日は先生とお話ししよう」
「……ちぇっ」



子どもっぽい口調でなんでと詰められる。
……猫みたいで可愛い。けど、流されたら止まらないタイプだ。気をつけよう……。


目の前のドアが開いた。



「や。お待たせしました」



さっきより近づいたわたしたちを見て、目をぱちくりさせる先生。



「……仲良くなれました?」







次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ