GS2 × GS3長編(完結済)

□ぐるぐる
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日曜。
スケート場へやってきた。



「滑れる?」
「うん、久々だけど前はけっこう……わっ、わぁっ」
「危な……掴まってて?行こう」
「……なんか、悔しい……」



全部が久しぶりすぎて、どっちが先輩なんだかわからない。

琉夏くんはウィンタースポーツが得意らしい。
雪国出身だったりするのだろうか。寒いの嫌いって言ってたけど。


手を引かれて、覚束ない足取りでついていく。

……そうだそうだ、このバランス……ふんふん。
思い出してきた。


2人で軽く一周して、壁にもたれる。



「足捻ってない?」
「捻ってません!」
「そっか」



得意げな顔にちょっとムスッとしてしまう。

わたしだって滑れるもん。



「もうカン取り戻した。行ってくる」
「そのままでいいのに。腕にギュって」
「見てて」



宣戦布告みたいにぴっと琉夏くんに指を突きつける。

そのまま滑り出した。
真っ直ぐ滑って、くるーっとリンクを一周。



「自慢げな顔かわい……上手い」



戻ってきて、小さくくるくる回った。

ぴっと止まって見せる。



「どう?嘘じゃなかったでしょ」
「銀盤の妖精だ。スゴイスゴイ」
「ふふん」



楽しい。もう一回行こう。



「天使。カワイイ……」



何か言ってたけど聞こえなかった。



……。

…………。



そのあと暫く滑って、わざと転ばせたり、転ばされたりして。

笑いすぎてくたくたになった。



「楽しかった。次はスキー行く?俺、上手いよ」
「スキーかぁ……高校の合宿以来だなぁ」
「合宿?」
「うん。はね学ね、3年生はクリスマスパーティとスキー合宿いっしょにやるんだ」
「何それ」



靴に履き替える。

あ、なんか感覚おかしい。歩きづらい……。



「そこ段差」
「きゃっ」
「……あるから気をつけて、って言おうとしたんだ。遅かった」



急に地面がなくなってわたしは思いっきり転んでしまった。

尻餅をついた、って表現がぴったりな転び方。



「大丈夫?」



焦った風に琉夏くんが手を出してくれる。

……恥ずかしい。うう。



「ごめん……えへへ、やっちゃった」



恥ずかしさを照れ笑いで隠す。
いーや全然隠せてない。

ああ……うう恥ずかしい。

伸ばされた手にしがみつく。



「……超いい」
「なんて?」
「何回でもすっ転んでいいよ。全部助けてやる」



ぐい、と引き上げられた。


靴を返して荷物を受け取って、スケート場を出る。

さて、公園入り口まで戻って……



「家行きたい」



ねねね、と服を引っ張られた。

……ハァ。
今日は大人しく帰ってくれる日かなって思ったのに。



「い、今……散らかってて」
「いいよ。気にしない」



ダメだった。



「もう遅いし……」
「まだ7時。俺小学生?」



これもダメだ。

……顔、見ない。
見ない、見ない……。

今日こそ断る……!



「いいでしょ。ダメ?」
「ああ近い……うっ」



無理矢理覗き込んでくるから、目が合った。

蜂蜜みたいな色をした綺麗な目が悲しそうで。

わかってる。この子の知恵だって。
こうやって琉夏くんは生きてきたんだってわかってる。

……なのに。なんでだろう。

目の奥に何かある。
言い表せないけど……。

その渦みたいな何かに引っ張られて飲み込まれて、わたしの決意は呆気なく崩される。



「あー、もう!」
「ん?」
「……ご飯買うから。琉夏くん荷物持ち。よろしく」



わたし、チョロい奴だ。


やった、と笑う彼の顔を見て頭を抱えた。

弱いなぁ……。









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