GS2 × GS3長編(完結済)

□ばーか
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ここしばらくずっと上機嫌だったのに。



「は?3人?」
「だとよ」



すっかり身支度を整えたコウはさらっと言った。

アイツと3人で出かけるぞって。
あっちのご要望らしい。



「……ハ、今更?舐められてる?俺」
「んなこと言うなよ。馴染みだろが」
「やだよ。行かない。楽しんできて」
「飯奢ってやるからよ」
「…………釣られない」
「いいのか?ホントにいいんだな?何でもいいぞ」
「…………釣られ……ない」
「ほー。そうかい。へぇ……じゃあ寿司でも行くかな」
「す……!?」
「捕まえた。行くべ」
「うわ、待ってコウ、ズルい……!」
「言い忘れたけど回るヤツな」



いやだー。なんて抵抗も虚しい。

引きずられるように駅前広場にやってきた。



「……ハァ」
「早く着いちまったな」
「帰りたい」



……別に、嫌いになったとかそんなんじゃない。

大事な幼なじみだと思ってるし。
アイツは良い子だ。

ただ、コウに俺が負けただけ。
完敗だったから。



「……なぁルカ」
「なに」
「お前、本当にいいのか?」
「何が言いたい?」



横目でコウを見る。



「別に俺だってまだ何もアイツに言ってねぇんだぞ」
「……そうだね。コウは奥手だから」
「テメェもだろうが」
「俺はアイツの気持ちわかるよ。いつからだと思う?コウが褒めた服ばっか着てくるようになったの」
「は?」
「行くとこだってコウの好きな場所ばっかりだ。帰り道もアイツはコウばっかり見てる」
「……」
「バレンタインも。クリスマスも初詣も。誕生日だって」
「……」
「俺に気遣ってるつもりなら大きなお世話なんだよ。ちゃんと見てやれ。自分のことばっか考えてないで」



……コウ、まだ自信ないんだ。
あんなにわかりやすいのに。

あんなに俺、惨めだったのに。

コウの気持ち、俺に隠したって全部バレバレだった。
アイツの方は隠す気ゼロ。



「俺は諦めた。とっくに。コウが不安なのはわかるけどさ」
「不安?俺が?」
「自信持てよ。……卒業式の日。わかってる?」
「……」



何も答えなかった。

ほんとに行くんだろうな……?
知らないぞ。ちゃんと迎えに行かないと。


あーあ、と遠くを見ていると、向こうからアイツが来た。

ほら、コウの好きな服だ。ビビットビビットしてる。目に優しくない感じ。



「……来た。な?ちゃんと褒めろよ」
「わぁってるよ」



肩を叩いた。

あー。
……どっかに美奈子いないかな。





……。

…………。




まぁ。
いなかったけど。

久々に3人で遊んだらそこそこ楽しかった。
そこそこね。

なんだかんだ言ったって2人のことは好きだから。



アイツを送った帰り。
ぐるぐる回る寿司屋にコウを引っ張っていった。


割り箸を握りしめて、確認するみたいにコウを見つめる。



「寿司!」
「……おお」
「食うぞ!」
「……おう」
「いいんだろ?いっぱい食べるけど」
「ハァ……ああ。食え食え」
「これとこれと……これと……あ、こっちも」
「高ェのばっか頼みやがる……」



タッチパネルをぽちぽちして、普段頼まないあれこれを押す。

楽しい〜!



寿司が届く。

食べる。



「美味い。最高だね」
「……そうかい」



ふ、と笑うコウ。



「……その、なんだ」
「ん?」



カニ。

北海道で食ったのとは比べ物にならないけど。
回転寿司の中ではまぁまぁ良いヤツを口に入れる。

美味い美味い。



「ありがとよ」



口に何か入れてるわけじゃないのにもごもごしながら言った。



「……どういたしまして。気持ち悪いな?」
「あァ?」
「ウソ。わかってる」



朝のどれかがコウの背中をどついたんだろう。
多分。知らないけど。



「お前だってちゃんと紹介しろ。カテキョだなんだ言わねェでよ。外堀埋めとけ」
「嘘じゃないって。社会の勉強?」
「いいとこ保健体育だろがバーカ」
「うわ、エロ。嫌われろ」
「るせェな。投げんな」



おしぼりを投げつけた。

……俺も似たようなこと思ったし人のこと言えないんだけど。



「……そっちは逆っぽいよ。なんかこっちが泣きそうになるくらい困った顔するから」
「何したんだよ……」
「ヒミツ」
「手が早ェ。バカ」
「イテ」



おしぼりを投げ返された。

顔に当たった。



「お前……こないだだろ。会ったの」
「うん」
「ハァ……」
「好きになっちゃった。仕方ないだろ?なっちゃったんだからさ」
「……」
「アイツにはあったのにな。ブレーキみたいなの……美奈子には効かなかったんだ」



しれっと言うと、コウは驚いた顔になった。

……こんなにストレートに言ったの、初めてだっけ?
わかんない。



「狙ってる奴多いだろ。あの顔じゃ」
「だろうね。……あれ、コウもタイプ?」
「…………べつに?」
「浮気野郎。死ね」
「だから投げんなコラ」



冗談だったのに。

まぁ。
可愛いから。当たり前。

可愛いから。超。



「俺さ、大学。一流行く。来年勉強して」
「……」



まぐろ。良いヤツ。

食べる。

美味い。



「いいじゃねーか。頑張れ」
「うん」



お皿を回収口に入れるとなんか上がうるさくて、ガコッて音がして。見上げた。

当たり、って書いてある。



「あれ、当たった……何これ。コウに似てる」
「あァ!?どこがだコラ」
「目つきが。アハハ、こえー」









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