GS2 × GS3長編(完結済)

□北海道に行こう!
1ページ/6ページ










空港のエスカレーターを上がってロビーに着く。

目印の時計の真下に、氷上くんがいた。



「氷上くん!」



相変わらず姿勢が良い……。

ちょっと背が伸びたのかな。
体格もなんとなくしっかりしたような。



「小波君。早いな」
「氷上くんこそ!」
「久しぶり」



声を聞いたら、わたしの知ってる彼だった。
歯切れがよくて聞き取りやすい。

時計を見上げると約束の10分前。
予定遵守なところも一緒だ。



「……なんというか、変わったな」
「え?そうかな」
「ああ。綺麗になった」
「わ……ありがとう」
「ハハ、その笑顔は変わってない。安心するよ」



びっくりした。
そんなさらっと言われるなんて。

尖った部分がなくなった感じがするなぁ。
のびのび生きてるんだろうか。



「オッス。早いね?」
「赤城くん。おはよう」
「ああ。時間厳守は鉄則だからね」
「相変わらずだな……一番心配なのは先生かな?抜けてるから」



思わず笑ってしまう。
たしかに課外授業で一番遅刻してたの先生だったかも。



「あ、佐伯くんと先生が来た」
「眠そう……」



わ、おっきなあくび。

2人とも眠そうだ。
微妙な距離感だな……。

わたしたちを見つけて、急ぐでもなくのんびり歩いてきた。



「おはようございます。あれ、最後でしたか?」
「おはよう……」
「まだ5分前だ」
「飛行機だもんね。行こう」
「搭乗手続きはあっちだな。並んでいるな……先に済ませよう」
「や……あれは美味しそうだ」
「先生!」
「ゴメンナサイ」



氷上くんの後ろについていく。
搭乗手続きと書かれた受付の列に並んだ。

若王子先生、ああいう店先で売ってるもの好きそうだもんね。手続き終わったら行きましょうね……。



「……なんか、修学旅行みたいだな」
「うん。思い出しちゃった」



すぐ後ろに並んだ赤城くんと話す。

偶然の連続で出会ったはずの彼と同じ大学で、一緒に旅行に行くなんて。
高校生の頃のわたしに教えてあげたい。きっと驚く。



「変わってないね?君も」
「それはどうも。赤城くんも変化ナシ」
「ハハ!嘘。綺麗になったと思うぜ?意地っ張りなのは変わってないけど」
「ふふっ。赤城くんも良い感じだよ。一言多いところは変わってないけど」



そこまで言ってお互い吹き出した。
わざと一言付け加えてる。仲良くなれたなぁ。




手続きを終えて、荷物チェックを済ませて。

呼び出されて飛行機の中へと進んだ。


人が多い。
合間を縫って席を探す。……ここだ。


上着を脱いで、キャリーケースと一緒に棚に上げようとして、後ろから声をかけられた。



「上げようか?」
「あっ、お願いしてもいいですか?ありがとうございます」



若王子先生。
近くの席みたいだ。

お言葉に甘えて荷物を上げてもらう。
……先生の荷物は少ないなぁ。


座席番号の紙を覗き込んだら、隣だった。
わたしは真ん中。



「先生そっちですね?どうぞ」
「窓際、代わる?」
「……!」



やった。

いいんですかありがとうございます、と頭を下げて、シートの奥へ進んだ。



「えへ……ありがとうございます」
「いえいえ」



ほとんど飛行機なんて乗らないし、どんな高い建物よりも上から見られる窓からの景色は大好きだ。


案内ビデオが流れて、そこから暫く飛行場のコンクリートを眺めていると、ゆっくりと機体が動き出した。
ぐるーっと回って滑走路へ走っていく。

真っ直ぐの道をどんどん加速して、揺れが大きくなっていった。
ガタガタと窓、席、床、全部が震え出す。



「あ、あわわわ」
「あれ、慣れてない?」
「だ、大丈夫です。乗ったことはありま……っ!」



ぶわっ、と浮遊感。
席が浮いて身体が置いていかれるような。持ち上げられるような。

思わずシートの手すりを握り締めた。



「……ふぅ」
「アハハ!怖かったね」



もう大丈夫だ。

落ち着いて窓の外に目をやると、どんどん街が小さくなっていくのが見えた。



「僕たちの街だ」
「ですね。……ちっちゃい」



海辺に添えたような街だ。
ジオラマみたいな、作り物みたいな。

……普段、あそこに住んでるんだな。わたしたち。なんか実感ない。


横から先生が顔を寄せてきて、窓を指さした。



「あの辺……もう見えないけど。プラネタリウムができたって知ってる?」
「あ、この前ニュースで見ました!まだ行ったことないです」
「そう。一緒に行かない?」
「行きたいです!先生のお休みの日って、」



エッフン!……と。
隣の方からお手本のような大きな咳払いが聞こえた。

騒ぎすぎちゃったかなって横を先生越しに見ると、佐伯くんが眉間に皺を寄せていた。
反対側佐伯くんだったんだ……。



「あーどうも。お邪魔してすみません。ちょっと僕、喉が」
「うるさかったですか?ゴメンナサイ」
「いいえ。別に。全然。ちっとも」



ぷい、と通路側に頬杖をついて不貞腐れてしまった。


若王子先生がこっちを見る。



「……人気者だね。小波さん」
「??」




人気……?




「佐伯くん」
「はい」
「頑張りましょう。お互いね」
「よくわかりませんけど。負けません」
「やれやれです」








次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ