GS2 × GS3長編(完結済)

□ICU
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1月も中頃。

駅前をプラプラしていると、学ランとパーカーの2人組に捕まった。
目の前に来たから避けようとしたのに、スポーツみたく回り込まれて立ち止まる。



「よぉ。今日は1人かい?ネエちゃん」
「ヒヒッ」



うん?わたしを知ってるみたいだ。

誰だっけ。



「桜井兄弟、どこにいるか知らねぇ?」
「カレシの場所ぐらい知ってんだろ?よく琉夏のヤローと一緒にいんの見てんだ」



……この人たち。
去年、確か……そうだ、初めて水族館に行った日に駅前で伸びてた人たちだ。思い出した。



「聞いてんのか?」
「……あ、そっか。すみません。今日は知らないです。あと彼氏じゃないです」
「あ?嘘つけや」
「ついてないですってば」
「だってば!だってよ。カワイイなぁおい」
「じゃあネエちゃんが相手してくれてもいいんだぜ?」
「ええ……嫌ですけど……」



手を伸ばしてくるので避ける。

……大学生にもなると、変な人に絡まれるのは慣れてしまった。
おじさんのナンパとか夜の仕事のスカウトなんかはしょっちゅうだし。
ああいう人は片っ端から声をかけてるから、徹底的に無視したりすれば勝手にどこかに行ってくれるんだけど。

この人は琉夏くんたちの知り合いだから逃してくれないかな……。

……にしても、なんだろう。
なんていうか……。



「ちょっとぐれーいいだろ」
「嫌です。……ちょっと、その」
「んだよ」
「……よくわかんないんですけど、なんだろう。すごくカッコ悪い……」
「!!」
「!!」



2人を見上げてみる。

……これといって特徴のない顔。
べつに特別不細工だとかそういう訳でもないどこにでもいる顔だけど、整ってはいない。人相は悪いかな。
や、顔は最初からどうだっていいんだけど、なんていうか……ねぇ?



「喧嘩も弱くて口調も汚いし、一人で来れない臆病で卑怯なところとか、本人じゃなくて弱そうなわたしに手を出そうとする小物感……カッコ悪いよ?」
「……」
「……」
「うん?」



黙ってしまう。

……なんだか心配になってきた。



「ええと……何か、嫌なことがあるの?わたしでいいならお話聞くよ?」



もしかしたら彼らも何か理由があるのかもしれない。
きっとそうだ。
理由もなく他人を追っかけ回して喧嘩してって……そんなはずないよね?



「ふ、ふざけんなゴラァ!」
「女だからって調子乗りやがってぶっ殺す!」
「落ち着いてってば……もう!」



ぷんすか怒ってしまった。

大きな振りかぶりで腕を掴まれそうになったので避ける。
だめだよもっとサラッと来ないと。琉夏くんみたいに。

うーん……救えないのかな。
可哀想になってきちゃった。



「オイ!!」



低い声が聞こえる。
この声……!



「なにやってんだ、テメーら」
「琉夏くん!?」
「桜井弟ォ!」
「どこいやがったテメェ!」
「ちょ……ちょ、ちょっと……」



まずい。

あの目はダメだ。
あの声もダメ。

ビリビリしてる。
電気が走ってるのが見えるみたいな、そんな空気。



「なにやってんだって聞いて、」
「琉夏くんっ!!!!」
「ぅおっ」
「うげっ」



耳がキーンとする。
多分、自分史上、過去一番の大声だ。

目の前の2人組が耳を塞いでしまった。
琉夏くんもぽかんとして足を止める。



「今はややこしくなるから引っ込んでて!!!」
「えっ?」
「いいから!!」
「えっと、美奈子?オマエさ、状況わかっ」
「なに!!」
「……はぁい。何コレ」



2人に向き直る。

腕を組んで顎を上げた。



「ほら、来なさい。そこの2人」
「ハ、ハァ!?」
「返事!!!」
「痛ッ!何す」
「返事」
「ハイ……」



あ。勢いでビンタしちゃった。

……いいや。
もう。

このまま突っ切っちゃえ!








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