GS3長編 設楽聖司×お嬢様(完結済)
□散歩
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ノックをしても返事がないので、勝手に開けた。
「おい」
机に本を広げて、穏やかな表情で読み込んでいる横顔が見える。
「おい」
集中しているのか、全く返事がない。
机の傍まで近づいて声をかけ直した。
「聞こえないのか」
「きゃっ」
びく、と飛び上がる勢いで驚いた美奈子は、目をまんまるにして設楽に向き直った。
目が合うと、それが嬉しそうな笑顔に変わる。
いつもの楽しそうな表情で、彼女は軽く首を傾げた。
照れくさそうに左耳に指をかける。
「あら、聖司さま。失礼しました」
「車を出せ」
「はい。どこへ?」
「どこでもいいだろ」
「わからないと運転できませんわ」
「いいから早くしろ」
「すぐ行きます」
彼女が本を閉じる前に部屋を出た。
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