GS3長編 設楽聖司×お嬢様(完結済)

□知人の知人は他人
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家について夕食を取り、暫くしてから明日の用事を思い出した。

明日になればまた忘れてしまいそうで、設楽は美奈子の部屋を訪ねることにした。



「おい」



コンコンコン、と早めに扉を叩く。
返事はない。

2回めのノックにも反応がない。


伝える内容は本当に大したことではないので、3度めはドアノブに手をかけた。



「入るぞ」



回すとすんなり開く。


何度か入ったが、相変わらず小綺麗に整頓された部屋だ。
元からあったがらくた同様の本棚と机以外ほとんど物が増えていない。
衣装ケースとベッドと椅子くらいだろうか。



「……」



珍しく、入ってすぐ左手の壁に向かうように置かれた机で美奈子は眠っていた。
椅子に浅く腰掛けたまま突っ伏して、死んでいるかのように静かに。

起こすのもどうかと思い、メモでも残すかと思い立つ。
起きたらそれはそれでいい。

紙とペンを借りようと机に近づいた。



「ん」



見慣れないものが卓上に転がっている。
何に使うものなのだろうか。
見たことがあるような、ないような。


不思議ではあったが触るわけにはいかないだろうと、目的のボールペンに手を伸ばした。



「はっ!?」
「うわ」



腕の影が彼女の顔にかかった瞬間、美奈子が飛び起きた。



「すみません、わたくしまた気付きませんでしたのね」



恥ずかしそうに、申し訳なさそうに左耳に手をかける。



「別に。なあ、それ……」
「はい?」
「あ」



何だ、と言いかけた時、机の上の謎の物体が何か思い出した。

思い出せたので聞かないことにする。



「いや、何でもない。明日の帰りは車いらない」
「承知いたしましたわ」
「って言いにきた。寝てたから書こうかと思って」
「あら、そんなご丁寧に」
「おまえの顔にな」
「ま!意地悪ですわ」



ちょっと拗ねたように美奈子は笑った。







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