GS3長編 設楽聖司×お嬢様(完結済)
□花見
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いつもの道、いつもの車内。
「桜が咲いてまいりましたね。もうすぐ満開ですわ」
「ああ」
「桜……すぐに散ってしまいますがそこが美しいのでしょうね」
「へぇ」
相変わらず会話としては成り立っていないが、設楽の眉間から皺は消えた。
高校の前に到着し、車が停止する。
後ろを振り返った美奈子が彼を見た。
「いってらっしゃいませ」
「美奈子」
「はいっ」
シートベルトを外しながら言った。
「日曜日空けとけ」
鞄を持つ。
ドアを開ける。
「承知いたしました。何かございますの?」
「何って、早く見ないと散るんだろ」
「はい?」
「桜」
「え、あっ……はい……?」
返事を待たずに閉めた。
「……車を出せということですわよね?」
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