GS3長編 設楽聖司×お嬢様(完結済)

□パーティ
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つられて寝ていたらしい。


設楽が目を覚ましても、美奈子はソファーの背もたれに寄りかかってぐーすかぴーと寝息を立てていた。
器用に寝るものだ。

起こさないように静かに膝から抜け出して、暫し考える。
何がいいだろうか。


ピアノの前に座った。


……思いついたのは、ショパンのエチュード。革命。
その第一音目を、強めに叩いた。



「ひゃっ!?」
「ぷっ……ははは!」



左手部分を流すように弾きながら、想像通りの驚きぶりに笑う。

気持ちいいほど理想の飛び起き方だった。
考えた甲斐がある。



「もうちょっと優しく起こしていただきたいですわ」



軽く目を擦りながら頬を膨らませる美奈子。



「へぇ。どんな風に?」
「どんなって……」
「言ってみろ」
「言ったらそうしてくださいます?」
「考えといてやる」
「嘘ばっかり」



そこで電子音が鳴った。
設楽の携帯電話だ。



「あら。お電話」
「……はい。なに?」



机の上からそれを取り上げると、彼女から離れた場所で応答する。



「うん。……いや、別に何も……え?」



ベッドルームにまで遠ざかった彼の断片的な声を聞き、何の話だろう、誰だろう、と軽く考えながら美奈子は背伸びをした。

随分としっかり眠ってしまった。
そういえば設楽に膝を貸した気がする。



「そんなの無理だ。……ダンスの方じゃないよ。そっちだって……嫌じゃないとかそういう話じゃなくて」



珍しく彼が焦っている。



「わかった、わかったから、……相手は別でも……そっちに……」
「?」



設楽が電話を耳に当てたままちらりと美奈子の方を見たので首を傾げた。



「……うん。わかったよ。後で」



電話を切った彼からは深い溜息が漏れる。
困ったように髪を掻いた。



「はぁ……」
「良くないお知らせですの?」
「ああ、良くない。ちっとも良くない。美奈子!」
「は、はいっ?」



設楽に向けて声をかけると、勢いよくこちらを向かれたので慌てて姿勢を正す。

彼はつかつかと歩み寄って、確認するように美奈子のぽかんとした顔を覗き込んだ。



「おまえ、踊れるよな?」
「え、ええ、そりゃあ多少経験は……でもそんなに」
「よし。出るぞ」



聞くや否やクローゼットに向かう。



「い、今からですの!?」
「パーティだ。貸衣装はあっちにあるって。俺は着替える。支度してこい」



どうやら割と急いでいるようだ。
ソファーから立ち上がった美奈子も出口へと駆けた。



「後で説明してくださいな……」
「わかった。……悪い。ありがとう」









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