GS3長編 設楽聖司×お嬢様(完結済)

□冬
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今年も恒例のあの日がやってきた。
恒例といっても3回目だが。
そして今年で最後の。



「クリスマスパーティ!楽しそうですわね、いってらっしゃいませ」
「ああ……」



正直微塵も乗り気ではない。
パーティ慣れしていないやつらが馬鹿騒ぎして食べて飲んでのお祭り騒ぎになるのは目に見えている。
特段仲良くしている者が多いわけではないし、学園長に挨拶しないとな程度にしか捉えていなかった。



「すぐ終わるから迎えにこい」
「承知いたしましたわ、またいつでも」
「ていうか一緒にこい。顔出したら帰る」
「わたくしは部外者です」
「ドレス着て派手に化粧すれば誰かわからないだろ」
「そんなもの持ち合わせがございません」
「なら買いに行くぞ」
「もうお時間ですわ」



車内で美奈子に言ってみたが断られるばかりだった。
こういう時はちっともはいと頷かない。

諦めてシートに背中を預けて窓の外を見る。

元々年末年始はパーティ三昧なのだ。
飽き飽きしていた。



「めんどくさい」
「最後じゃありませんの。楽しんでくださいませ」
「パーティなんて毎月、」
「聖司さま」



困ったように笑った美奈子が静かに言う。
設楽の言葉を遮るように。諭すように。



「同じ年代で同じ学び舎の方々だけで何かできる機会なんて、高校を卒業したらもう殆どございませんのよ」



鏡に映った目は寂しげに見えた。



「どうか今の恵まれた環境を大事になさってくださいな」



そういえば美奈子は高校を中退していたなと思い出す。
毎日送り迎えの度にあちこち見回しているし、イベントの話には強く食いついてくる。

彼女にはできなかったことを煩わしく思って愚痴を溢すのは我儘だっただろうか。



「……わかったよ」



少しばかりの罪悪感が芽生えて口籠った。

素直な返事に美奈子は微笑む。
会場前に車を寄せると、振り返って言った。



「また、良いお土産話を聞かせてくださいませ」
「ああ」



設楽が出てドアが閉まると、んん……と彼女は自分の唇に触れた。

1人きりの車内は色々と考え込んでしまう。



「……言いすぎたかしら」



つい話を遮ってしまった。
そうですねぇと聞き流せばそれでよかったのに。

自分は行けない。
やってみたいことは片っ端から挑戦しているつもりだが、こういう類のものはやりたくてもできない。
二度と。
今もし高校生になったとしても同い年にはなれないのだ。



「はぁ〜……」



嫉妬深い自分が嫌になる。

あの場にいて、彼と同じところで同じものを見て経験することができたらどんなに良いだろうか。









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