GS3長編 設楽聖司×お嬢様(完結済)

□秘密
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そんなことが数日続いて、日に日に設楽のイライラは募っていった。
それとなく聞いても惚けられたりのらりくらりとかわされる。

特に理由はなかったが暫く迎えの車はいらないと伝えた。




卒業旅行の日も近づき、具体的な行き先を決める為に友人に呼び出されていた。
いつもの彼である。



「設楽〜……聞いてるか?」
「聞いてる」
「すごい顔だな」
「普通だろ」
「それまだ見てないんだよ。折らないでくれると助かる」
「…………ふん」



気づいたら、手元のチラシは全て四連鶴へと変貌を遂げていた。

設楽には昔から何かと無意識に指を動かす癖がある。
そしてそれは苛立ち度合いに比例して細かくなっていく。



「決まるものも決まらないな。何かあったなら話聞くけど」
「別に。なんでもない。何もない」
「どう見てもイライラしてるじゃないか」
「してない」



そして黙る設楽。

……こうなると、何かつついてみないと口を聞いてくれないことを友人である彼は知っていた。
間違いであれば冷静に否定するし、合っていれば黙るか逆に捲し立ててくるのでわかりやすい。

最近の彼の変化を思い出して、ひとつ捻り出した。



「そういえば最近車で帰ってないよな。珍しく」
「…………」
「運動?」
「違う。……あいつが悪い!」



よくわからないが、かすめることはできたらしい。

堰を切ったように設楽はぶつぶつと話し始めた。
独り言のように聞こえて本当に独り言だ。
ただし反応しても構わない、いつのまにか返事を求めてくるタイプの。



「大体……おかしいだろ。何で寝たふりしてこっそり降りていくんだ」
「へぇ?」
「何で俺が行くと散るんだよ。何もないなら話を続ければいいだろ」
「それで?」
「この前の日曜日なんかあいつ俺との外出を断ったんだぞ。いつもならすぐ承知するくせに」



……?と、聞き手の彼は困ったように眼鏡を上げる。



「ごめん。全然理解できなかった」
「しなくていい。ああもう。余計にわからなくなった。紺野おまえ責任取れ」
「えぇ……?」



ひとつもわからなかったが、話の要点は捉えた。
“あいつ”という単語から、1人誰か彼の心を掻き乱している人間がいる。

誰でも構わないし心当たりはなかったが、大体察しをつけることはできた。
これもまた当てずっぽうでもいいので言ってみる。



「要は……誰かさんへのヤキモチ?」
「違う。誰が。誰にだよ。なんでそうなる」
「当たりかな……」



思い切り設楽の声が上擦った。

ここまでわかるようになったのも付き合いの長さか、と思わず笑ってしまう。



「よく知らないけど、さっきのを全部言わないと相手には伝わらないぞ」
「…………」



いつものように矢継ぎ早に人格ごと否定されることはなかった。









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