GS3長編 設楽聖司×お嬢様(完結済)

□卒業
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ほう……と魂が抜けたように美奈子が溜息を吐く。



「……なんだか、拍子抜け、しましたわ……」
「だから言っただろ。ああいう人達なんだ」



設楽が両親と大学入学後の話をしているところに美奈子がお茶を持ってきたので、ついでだと思って交際を伝えた。
以前から一緒に来いと散々言っていたがいやいやと縮こまるのでやきもきしていたところだ。

顔をこわばらせて固まる美奈子を両親は笑い飛ばした。
いいじゃない、だのおめでとう、だのと温かい言葉をかけられてようやく瞬きをしたので何を言われると思っていたのか気になる。
別に何か変わるわけでもないのに変な奴だと思った。



「もっとこう、おまえなんかに息子はやらん!みたいなことを言われるのかと」
「なんだよそれ」
「ご存知ありませんの?こう、ちゃぶだいをひっくり返して、どなりちらされて」
「知らない」
「挙げ句の果てにはこの泥棒猫!って引っ叩かれたり」
「……色々混ざってないか?」



想像したらしい彼女はぞぞぞと震えている。



「で、何で断ったんだ」
「だってこれから聖司さまは大学でもっと忙しくなるのでしょう?」
「ん?まぁ……」
「お仕事までやめたら、わたくしはその間お家で何をすればいいんですの?」



別に働かなくても居ていいという母の提案に、美奈子はすぐ首を振った。
遠慮や社交辞令ではないと誰もがわかるしっかりした口調で、働きたいです、と。



「なにより聖司さまを朝起こす口実がなくなってしまいますわ……」



いつになく真剣に考え込む彼女。



「そっちは置いておくが……あるぞ。フランス語の勉強だ。おまえ話せるか?」
「いえ、ほとんど」
「それだ。パスポートは?」
「暫くはまだ切れませんけれど」



ひとりで納得したように頷く設楽。



「ええと?」
「来年の夏までにどうにかしろ。それでいい」
「フランス語を……?」
「留学するんだ。パリに行く。ついてくるだろ?」



沈黙。

……。

……?

……!

頭でその言葉を噛み砕く。



「ええっ!?」



思った以上に大きな声が出たのか、美奈子がすぐに口元に手を当てた。



「初耳ですわ」
「初めて言ったからな」



飄々と答える。



「そんな……」
「おまえの頭ならなんとかなるだろ」
「そっちではなくて」



ふぅ……と美奈子は諦めたように息を吐いた。



「もう。ご勝手ですわ。ひとの人生をなんだと思っておられますの」
「安心しろ。全部貰ってやるから」
「ま!上からですこと」












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