ときメモGS2
□都合のいい男たち
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……言うて、ボクもよくわからへん。
「美奈子ちゃん、起きや〜」
朝。
美奈子ちゃんは死んだみたいに寝てた。
いっつも夜急に電話してきて、泊めてー言うて、お土産買ってきてくれる。
服も制服やったり、可愛い服やったり、ボクの好きな服やったり、露出多かったり色々。
しばらくお茶飲みながら話して、宿題やったりやらんかったりして、横で寝る。
ぎゅーしてもちゅーしても何も抵抗したり呆れたりせーへんけど、めっちゃ疲れた顔でそれを隠して可愛く笑うから、なんとなくそれ以上できひんし。
「美奈子ちゃーん」
それから、たま〜にこういう時がある。
大体ボクが起きたら隣にもうおらんくて、貸した服が綺麗に畳まれて、朝ごはん作って帰ってる。
悲しいけど、なんか余計にまた会いたなるし、可愛いから何も言われへん。
今日は、その日じゃなくて。
ずーっとひたすら寝てる日みたいやった。
「起きてーやー」
いくら声かけても、ちょっと揺すってみても、頬っぺたつついても起きひん。
息してるんかもわからんくらい静かに、微動だにせーへんから、最初は死んでるんやと思って焦ったのを覚えてる。
「ボク先行くで〜?」
声かけて、自分の準備して、声かけて、を繰り返して。
さぁ出発ってネクタイ締めた辺りでかけた声に、美奈子ちゃんの瞼がぴくっと動いた。
もぞもぞして、布団を被り直す。
「……んん」
「あ、起きた?」
ベッドの前に膝ついて、その可愛い寝顔を覗き込んだ。
寝てるときもホンマに可愛くて困る。
「今日は眠い日やね」
「……、」
ボクの予想やけど。
こういう日は、前の日寝てないんちゃうかと思う。
寝貯めするみたいなこの寝方。
「……、……で」
「ん?なんて?」
寝てるのをいいことに髪の毛撫で撫でしてたら、美奈子ちゃんが寝言みたいに囁いた。
「おいてかないで」
その言葉に、手が止まる。
「……」
胸が痛くなった。
このままボクも一緒に二度寝したい。
でも、きっとそうしたら、
「……いっつも、ボクが起きたらおらんやん」
もう一度起きた時美奈子ちゃんはいないと思う。
いつも通り服畳んで、ご飯作って、キレーにして帰るんや。
そんなんされたら、ホンマに昨日おったんやろか、とか、夢やったんかなぁ、とか考えて、悲しくなる。
……ズルいわぁ。
全然美奈子ちゃんのこと教えてもらってないのに。
何も知らんのに。
このまま、寝てる美奈子ちゃんをどっか遠く運んで、2人で暮らせたらしゃーわせやろなぁ。
この部屋でもええけど、すぐ鍵開けて逃げられそうやし。
はーあ、なんて溜息が出た。
長い睫毛にキスして、その物凄い引力を振り切って立ち上がる。
「おやすみ、美奈子ちゃん」
返事はなかった。
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