GS2 × GS3長編(完結済)

□恒例
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「美奈子ちゃん」
「きゃっ」



家に向かう道。
せっかくだしって思って商店街で店先の服を眺めていたら、肩をぽんぽんって叩かれた。

振り返ると、制服姿の彼がニコニコ笑っている。



「オッス。何してんの」
「オッス……琉夏くんこそ。授業は?」
「んー?」
「んーじゃないでしょ。卒業は大丈夫?」
「平気。足りてる……多分。ほっといて」



斜め上を見ながら誤魔化すように唇を尖らせる。

……ほんとかなぁ。



「わたし、これからバイトで」
「へぇ。どこ?」
「塾講だよ」
「なにそれ。スゲェいい」



ぱっと顔を明るくした琉夏くんがすり寄ってくる。



「科目は?」
「文系全般」
「高校生?中学生?」
「高校生」
「……!」



更に期待した顔になった。



「国語苦手なんだ。教えて?個人授業でひとつ」
「学校抜けてくるような子には教えません。まず全体授業を受けなさい」
「え〜……」



露骨に落ち込んだ……。



「退屈なんだ。先に教科書読んだら全部覚えちゃうだろ?だから」
「……覚えちゃうの?」
「うん。国語はわかんないけどね」



……冗談なんだか本気なんだかわからない。


商店街を抜ける。
家まではあと5分。



「じゃあね。気をつけて」
「うん。また電話する。そんじゃね」



ふらふらと歩いていった。

……電話か。
ちょっと苦手なんだけどな。
あんまり経験がない。
高校時代だって先生からの課外授業のお誘いがあったくらいだ。

せめてもの抵抗で好きな音楽を着信音に設定している。
高校から変わってない。






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