GS2 × GS3長編(完結済)

□初めての
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「やっぱスゲェ」
「ふふ……イルカ好き?」
「好き」



ショーが終わって、次々と席を立つ周りの人たち。


まだプールを泳いでいるイルカたちを目で追いながら琉夏くんは楽しそうに笑っていた。
濡れた右腕をぷらぷらと振っている。

ショーの最後の大ジャンプで飛んできた水飛沫。
驚いて固まっていると目の前に琉夏くんが持った館内地図のパンフレットが伸びてきて、わたしは顔だけ被害を免れた。
服は濡れたけどなんてことない。



「ごめんね、濡れちゃったね」
「庇いきれなかった。ゴメン」



前の席行こうって言い出したのどっちだっけ。
どっちもか。

名残惜しそうに立ち上がる。



「中見よう」
「あ、うん」



琉夏くんが濡れたパンフレットをぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に突っ込んだ。
わたしが持ってる方を覗き込んでくる。



「どこ行きたい?」
「……えっと」



来て一番にショーに向かったからまだ何も見ていない。
大きな水槽も見たいし、クラゲも見たいし、水中トンネルも見たい。
あとアザラシとペンギンと……爬虫類もちょっと見てみたいし。

うーんうーんと迷っていると、琉夏くんがじっとわたしを見た。



「どれで迷ってんの?全部見よう」
「……!」
「嬉しそうでカワイイ。よし」



行こ行こ、と背中を押される。

薄暗い館内に押し込まれるように足を進めた。






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