GS2 × GS3長編(完結済)

□お邪魔します
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お姫様を下ろしてバイクを停める。

……あ。やっぱりいた。
マズイ。



「ルカ!テメェバイク……あン?」



何も言わずにバイクを使った俺に向けて怒鳴り出したコウが視線を奥へずらした。

美奈子はきょとんとしてる。



「連れてきた」
「誰だよ」
「ああ、と……俺の家庭教師?」
「……ハァ?」



眉間の皺。顔!
だから怖いって言われるんだ。



「コウ。俺のおにーちゃん」
「はじめまして……小波美奈子です……?」
「カテキョぉ?お前が?」
「うん。俺ベンキョーするんだ。な?」
「あ、ハイ。えっと、教えます……国語が苦手って聞いたので、その」



よくわからないけど話に乗ってくれてる。
大人の順応力、スゲェ。
コウ見てもビビってないし。


ガッ、て首根っこを掴まれて引っ張られた。



「ちょっと来いルカ」
「わ。待って……あ、入ってていいよ」
「……って言われても……」



立ち尽くした美奈子を横目に、家の裏側へ回り込んだ。



「誰だよ」
「だから家庭教師だって」
「嘘ついてんじゃねェぞ」
「嘘じゃない」
「……教えろよ」
「ヤダ」
「水クセェ」
「美奈子はあげない。好きなんだ」
「……ほォ」



コウが笑った。
売られた喧嘩を買う時と同じ。

人相悪いって。


その後もあーだこーだうるさいから、逃げる。
この世話焼きめ。いや、野次馬。



「お待たせ。こっち」



ドアを開けて入った。

俺にとってはいつも通りの我が家。


連れてきたけどノープラン。
とりあえず一緒にいられるから何でもいいんだ。



「わぁ……すごいね」
「うん。キッチンが広いんだ。ガスコンロだけど」
「え?ガス……お風呂はどうしてるの?」
「シャワーがあるよ。外だけど」
「……今の時期も?」
「ヒミツ」



……目を逸らした。



「ルカ。バイク持ってくぞ」
「えー」



家の外からコウが言う。

バイトだっけ。
忘れてた。だから怒ってたんだ。


珍しそうに椅子に座ったり上を見たりしてる美奈子に聞いてみる。



「怖くない?アイツ」
「え?うーん……高校生でしょ?」
「ブッ……アハハ!ハッ……」



吹き出した。

変なところに入った。



「ゲホッ……うん。そう。アレでまだ高校生。そっか……」



ぽかんとしたままの美奈子がうん、と頷く。

高校生でしょ?だって。
あのナリで。
確かにそうだ。

俺たちって高校生だった。
美奈子から見たらずっと年下の男子高校生。



「ベッドルームもあるよ。見る?」
「見たい!」



ぱっと笑う美奈子。
ワクワクしてる顔。
可愛い。

階段を上がって、俺の部屋。



「上はコウの部屋」
「……いい景色」



窓際に歩いて、外を見る。

目を閉じて波の音を聞く。
デッキに出なくても充分だ。


暫くして、美奈子が小さく言った。



「珊瑚礁みたい……」
「え?」
「あ、ううん……高校のときバイトしてた喫茶店があって」
「へー」
「今はもう潰れてて。懐かしいな……ごめんね、関係ない話」



……へー。
喫茶店でバイトしてたんだ。

〇〇みたいって言葉はあんまり好きじゃない。
特に年上が言うやつ。



「ここ寒いでしょ」
「うん。かなり寒い。……夏は暑い」



今は冬。
隙間風は堪らなく寒い。けど、なんとかなってる。
それでもいいって思うから。


暫くして、美奈子が俺を見た。



「えっと、お勉強する?」
「……ん?」
「んじゃなくて。家庭教師なんでしょ?わたし」
「……そうだっけ」



テキトー言ったのが効いちゃった。

とぼけて、顔を見る。



「……」
「……」



……可愛い。
ほえー、って表情が小動物みたいな感じ。
今日の服も超ストライク。

ギュってしたい。
…………ここでしたら、どんな顔する?



「うん、どうしたの?」
「……あ」



危ない。

咄嗟に窓から離れる。



「下、行こう。ここダメだ」
「?」
「保健体育って感じ」
「??」



まだ早い。まだ早い……。

美奈子の背中を押して、一階へ降りた。







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