GS2 × GS3長編(完結済)

□じゃないこともない
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……よし。
授業レポート完成。
フォームから提出。

終わったぁ……。


携帯を開いて弄る。
特に目的もないけど。

メールを読み返す。
最近は琉夏くんからばっかりだ。着信も。

……あ、お祈りメール見ちゃった。消しておこう。



急に携帯が震えた。

佐伯くんだ!



「よう。俺」
「もしもし。どうしたの?」
「近く来たから。飯行こう」
「うん、いいよ。駅?」
「ああ」
「うんと……15分くらいしたら行くね」
「オッケー」



大学で会ったら話すけど、こうやって電話が来るのは久しぶりだった。

部屋着から今日の昼服に着替えて鏡を見て……携帯、財布、鍵。こんなもんかな。


ものの5分で準備完了。
……我ながらフットワーク軽い?


駅までは10分。

歩いて歩いて、寒そうな背中を見つけた。



「お待たせ」
「待ってない。早いな……寒っ!」
「そう?行こっか」



なんとなく歩き出す。


冬だな……。
冬の気温だ。

佐伯くんは寒いの苦手だもんね。
夏の海の男だから。



「佐伯くんはどこ住んでるんだっけ」
「反対側」
「海側か。見えるの?」
「見えるし10分で着く」
「そっか。いいね」



目の前が海だった高校時代。

窓から夜明けの海を眺めながらコーヒー飲んでるって言ってたっけ。
今でもしてるのかな。


商店街に入って、飲み屋街を歩く。



「ES書いてたんだけどね、進まなくて」
「へぇ。どこで?」
「……志望動機とか。自己PRとか」
「全部か」
「うん。……就職したくないのかな、わたし」
「だったら……まあいいや。続けてどうぞ」



店のドアを開けて入る。

案内されて階段を上がった。



「一流に来たのも、なんか……なんとなくって感じ」
「……なんとなくで来れるとこじゃないぞ?」
「勉強は頑張ったよ。そうじゃなくて」
「わかるけどさ。とりあえず行けば見つかるんじゃないかってのは」
「そう、それ」



席について手を拭いて、メニューを開く。



「……ふぅ。話題変えよう」
「あ、そうだ。こないだの旅行の話。聞いたか?」
「うん。北海道でしょ?」
「な。寒い時に寒いとこに行くんだ。カニだのジンギスカンだの」



氷上くんに聞いたら意気揚々と答えてくれた。

……嫌そうにしてるつもりだろうな、佐伯くん。
にこにこしてるよ。



「ふふ、楽しみなんだ」
「え?……行くだろ?おまえも」
「うん。行くよ」
「……よかった」



前言ってた通りのメンバーになったらしい。

一流進学組っていうかなんていうか。
わたしと佐伯くん、氷上くん、赤城くん、若王子先生。

この名前の並びで違和感のない先生ってやっぱりすごいと思う。



「同窓会だね」
「そうだな。成人式の後おまえいなかったけど一応同窓会やったんだぜ?よくわかんない居酒屋でさ」
「氷上くん幹事?」
「そう。飲まされてて可哀想だった。すぐ帰ったから知らないけど。若王子先生もニコニコしながら飲んでたな」
「いいな。わたしもそこ行きたかった」
「来ればよかったんだ。……遠いんだっけ」
「そこそこ」



成人式は中学の方だ。
引っ越す前の土地の方に参加した。

みんな久しぶりだったな。
女の子なんてみんなメイクばっちりで誰だかわからなくて。
男の子も背が伸びて声が変わって。
美奈子ちゃん変わってなーい、って言われて複雑だった。

……でもなんとなく、あの人たちとはもう一生会わない気がした。



「中学も楽しかったけど、やっぱり高校が一番だったなぁ」
「ああ……俺も」
「ホント?あんなに毎日文句言ってたのに」
「ホントだよ」



口を開けば不平不満、お店の話だった。
何回愚痴を聞き流したか、帰り道置いていかれたか、チョップされたかもうわからない。


開いたままだったメニューを覗き込んであれやこれや指定する。



「おまえ何飲む?」
「ビール」
「かわいくない……あ、スイマセーン」



何で!
いいでしょ別に!


あっという間に1杯目とお通しが運ばれてきた。



「はい、乾杯」
「乾杯」
「……あーおいしい」
「結構飲むの?」
「どうだろう。普通?」



弱くはないと思う。

……隣の席の女の人はカルーアミルクをちびちび飲んでいた。



「……やっぱカシオレとか飲まないと可愛くない?」
「プッ……ごめんって。いいよおまえは」



気にすんなよとフォローされた。

最初にかわいくないって言った癖に。



「今日、いっぱい飲んじゃう気がする」
「ストレス?」
「いろいろ……ねぇ、わたし顔色変わらないらしいからさ、いいとこで止めてね?」
「それわかんないぞ。具体的になんかないの?」
「うーん」
「いいよ。送ってやる。……あ、立てないとかはナシ」
「そこまでバカじゃないもん」



就活以外の悩みを思い出しながらまたグラスをあおった。



……。

…………。




店を出て歩く。

あれ、涼しい。
自分が熱いのかな。



「もう一軒行こう!ほら、早く早く」
「……俺ナメてた。おまえのこと」
「え?なんて?」
「なんでも。悔しいから乗った。どこ」
「ん〜……あれ」
「チェーンだろ」
「今のわたしたちはぼったくりに合う可能性がひじょうにたかい」
「かしこい」
「あいてるかなぁ」
「サラッと組むな腕を……走るなって」



いい感じになってきたし、まだ話し足りない。
何語ったかちょっと思い出せないけど。

楽しい!




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