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□意気地なしはどっち?
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私は彼のことが大好きだ。
しかし、彼にも好きな人がいた。

「ねえ、文次郎。…言わないの?」

「は?突然なんだ。」

文次郎には似合わないきょとんとした顔でそう言い放った。

仙蔵が忍務に行ってしまったので、
文次郎達の部屋でのんびりお茶をしていた私はふと思ったのだ。

「なにって、愛の告白?」

「はぁあ!?ななな何言ってんだ!バカタレ!!」

彼は想いこそ伝えていないものの分かりやすい。

学園一ギンギンに忍者している男が
彼女の前だけ、穏やかな日差しのような暖かな目をして、
それがまるで恋人同士のようで…。


それを見るのがたまらなく…辛い。


「相談してこないけど好きな人いるでしょう?
いつ、玉砕してくるのかなーって…
学園一忍者してる男もさすがに
振られるのは怖いんだねえ。」

「なんだと。」

「だって、そうでしょう?
いつまでも此処で、うじうじしていて
他のやつにとられるんじゃない?
あの人…人気者だもの。
それとも、三禁があるから言い訳するつもり?
意気地なしー!へたれー!ばかたれー!」


うそ。本当はそんなこと思ってない。
あの人に負けないくらい好きなのだ

でも、一度でも逃げた私が
本当の想いを伝えるなんて
出来るはずがない。


「うるせぇ!!へたれだぁ!?
俺はどこぞのアヒル野郎とは違う!!」


そう言いきった文次郎は勢いよく立ち上がり走り去った。


背中を押してしまった私は後悔するだろう。
文次郎が振られて帰ってくるなんてことは…
私の初恋が、戻ってくることはないのだから。

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