SERVAMPワンライ小説
□Alice in the tea party
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「静かになったなこのお屋敷も」
「そうね…リリィと御園坊っちゃんがこの家を出てからとても…」
リリィの体から灰塵が放出したあの日、有栖院御園はこのあたたかい秘密の園を…有栖院家の屋敷から旅立った。
それからといい、いつもは脱ぐなと叫ぶ御園の声が響いていた屋敷もずいぶんと静かになっている。
注がれた紅茶はいつものように甘くて…けれどもなにかが抜けたような味がしていた。
「あんだけうるさかったのが…嘘のようっすわ」
「御園坊っちゃんも…御国坊っちゃんも元気にしているかしら」
昔あった悲惨で不幸なあの事件からこの有栖院家でタブーとなっていた長男有栖院家御国の名前を三月はぼうっと空を眺めるような目をして口にする。
ついこの前まで御国のことを口にすると怒りと悲しみに満ちた顔をしていた父親の御門も今ではその名前を聞くと穏やかで少し寂しげな目をして上を見るのだ。
「きっと、元気にしておられるでしょう。」
ひょっこりと見えるシルクハット。そこには御国と御園の家庭教師をつとめていた服部がドアの前で優しげな笑みを浮かべていた。
「私も同席していいですかな?」
二人はコクりとうなずく。
同じ柄のカップに紅茶が注がれて、ふんわりと独特の香りが鼻をくすぐった。
「きっと大丈夫じゃろう、あの二人なら。いつの日か御園坊っちゃんが御国坊っちゃんを連れて帰ってきて…きっとこのお屋敷もまた賑やかになってこの静けさが懐かしくなる日がくると私は信じよう。」
「そうですねぇ…」
「!お義母さん!!」
今度はメイド服を着た年配の女性メイド長のやまねがドアからひょこりとこちらを覗いていた。
「私も同席していいかしら?」
全員がコクりと頷けばまた同じ柄のカップに紅茶が注がれる。
「御国坊っちゃんの心は奥深いところへいってしまって私達には届かないところへいってしまっているけれどきっと御園坊っちゃんなら…その心にたどり着いてこの有栖院家に二人で戻ってきてくれるはずだわ」
その言葉に誰もが頷きそっと微笑んだ。
ソレはこの秘密の園にいる誰もが望み、夢見る瞬間。二人が肩を並べて何かを言い合いながら有栖院家の門をくぐってただいまという言葉を聞く…それが有栖院家にいる者達すべての願い。
「その時が来たら…きっと賑やかなお茶会になるわね」
「いや。賑やかどころじゃなくてやかましいお茶会になるかもしんねぇすわ」
洞洞のその言葉を聞いたお茶会の参加者はくすくすと笑った。
幸せであたたかで賑やかでちょっぴり騒がしすぎる楽しげなお茶会を夢見て秘密の園の住人は今日も兄弟二人の帰りを待ち続ける。
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「第二回ワンライ、『有栖院』でした。」
「おい、リリィ!!有栖院なのに僕が一回も出てきていないじゃないか!!」
「あくまで今回は有栖院でしたからねぇ」
「くそ…次こそは僕が…!!」
「御園の活躍期待していますよ、読んでくださった皆様ありがとうございました。」