例えばこんな恋
□First.
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その姿を確認するや否や俺は急いで玄関へ向かった。
バンッ!と勢いよく扉を開けるとその少年は俺の顔を見上げた。
「愁にぃっ!」
俺の名前を呼んだ少年は胸に飛び込んできた。
「会いたかったよ!愁にぃ!」
顔を上げて可憐に微笑む少年は俺の従兄弟、神谷蓮。
確か春に高校生になった筈だ。
「おま、なんでこっちにいるんだよ!
学校は?おばさん達は?
てか来るなら来るで連絡寄越せ馬鹿野郎…」
俺は蓮の突然の訪問に驚いて質問を投げつけた。
「あれ?お母さんから聞いてない?」
その問いかけに?を浮かべると蓮は もう、お母さんったら… とぶつぶつ言い出した。
ひと通り言い終えて状況がつかめない俺にようやく気付いたらしい蓮が
「あ、説明遅くなってごめんね?
これ、みて?」
と言って自分の制服を指差す。
薄い青のシャツにベージュのカーディガン、そして白いブレザー。
その胸ポケットには、うちの学校の校章。
「え、お前、まさか…」
と蓮を指差して唖然とする俺。
「今日から愁にぃの学校に通う事になりました!」
よろしくねっ愁にぃっ、と語尾に☆が付く勢いで言う。
こいつが俺の教え子になるのかと思うと頭が痛くなる…。
とんだ厄介が舞い込んで来た、そんな朝だった。