例えばこんな恋
□Second
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あの日から僕は愁にぃに会えなくなった。
───また、会おうな。
そう言って頭をなでてもらった日からもう6年が過ぎていた。
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「えー、ここの文の構成は…」
初めて受ける愁にぃの授業。
昔、勉強を教えてもらう機会はあったけど、その時と変わらず、えー、やらあー、やら、んーとか言ってて。
分からないところは無いかしつこいくらい聞いてて。
一段落つくと前髪を掻き上げる癖とか。
6年前とちっとも変わってなくて嬉しかったのと同時に、愁にぃの笑顔が僕だけじゃなくて他の人達に向けられてるのが少し気に食わなかった。
───前は僕だけが独占していたのに…。
そう思って気づく。
───僕、愁にぃのこと……?
そんな訳ない、ただの憧れだ。
そう自分に言い聞かせてペンを取った。
もちろんその後の授業に身が入る訳がなくて、放課後愁にぃに怒られた。
でも、ちょっと嬉しかったのは内緒の話っ。