ランスさまのペット(仮)

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「よ...っと、うん、これで大丈夫かな」

目の前に積み上がった段ボール箱を眺め、一つ息を吐き出す。
この辺りに積まれていたのは空き箱だったようで、少し潰れてしまったものもあるけれど特に問題はない...と思いたい。
それよりも今は早くランスさまのところへ戻らなければ、と半ば飛び出すように倉庫を出る。
腕時計を見ればアポロさまの部屋を出てからもう三十分も経っていた。これは確実に怒られる。
走らないように言われている廊下を走りに近い早足で進む。
ズキズキと下腹部が鈍く痛むけれど、そんなことに構ってはいられない。これ以上遅くなったら命の危険すら考えられる。
ランスさまの執務室のドアを、ノックもせずに開ける。どうかお説教だけで済みますようにと願って部屋に入ったのだけれど。

「あ...れ?ランスさま...?」

目に見える範囲にランスさまの姿はなく、デスクに近付いてみると、パソコンの電源が入ったままになっているどころかデータの打ち込みが途中の状態。部下が持って来たまだ最終チェックの終わっていない書類の束。急いで立ち上がったかのように後ろに下がったままの椅子。少し冷めている紅茶。
どこをとっても不自然だ。ランスさまらしくない。
おかしい、と思いつつ一旦廊下に出る。
すると、廊下の向こうからアテナさまが来るのが見えた。
アテナさま、そう私が呼びかけようと声を出すより先に、アテナさまは私に駆け寄って声を上げた。

「リナ!こんなところにいたのね!探してたのよ!」

「そ、そうだったんですか...!?すみません...」

「いいのよ、よかったわ見つかって」

ほっとしたように言うアテナさまに、私は疑問を抱えていた。
どうしてアテナさまが私を探していたのだろう?
そして、ランスさまはどこへ行ったのだろう?
そんな私の疑問を察したようにアテナさまは笑う。

「ランスはもうすぐ戻って来るわ。あたくしはランスに頼まれてあなたを探していたの」

「ランスさまが...?」

「詳しい事はランスから聞くといいわ、ほら」

アテナさまが指差した先に、らしくない表情をしたランスさまの姿が見えた。

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