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□夏のお嬢さん
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黄色い花畑の中に

一人太陽の光を浴びて

凛と立っている、君。


嗚呼、君の笑顔は僕の向日葵。

【夏のお嬢さん】

蒸し暑い夏の日。
青学のテニス部は全国大会へ向けて今日も今日とて練習に励んでいた…と、思う。普段なら。
今日は竜崎先生の計らいで綺麗な草原にピクニックに来ている。
標高が少し高く、近くに小さい川が流れていてかすこし涼しい。 夏にはもってこいの避暑地だ。
右には森が広がり、左にはお花畑とゆう何ともメルヘンチックなこの光景。
我がテニス部には女子も混ざっているので、その娘達は綺麗な景色に目を奪われているようだ。

僕の愛しい恋人も例外ではないようだ。
元から丸くて大きい目を更に見開いてキラキラと音がしそうなくらい輝かせて。
目の前に広がる色鮮やかな花々や冷たそうな透明の川を見ていた。
で、その内きっとそのまま僕の所へ飛んで来て

「不二ーっ!見て見てえっ!」

って言うんだろうな。なんて、思いながら車の積み荷を運んでいたら、案の定そうやって呼ばれた。

「ちょっと待ってね、積み荷を置いたらすぐ行くから。」

「わかったにゃー!」

なんて満面の笑みで手を降ってくれた。


積み荷を運び終えて、彼女を探しに行く。大抵いそうな場所はわかってるから探すのも簡単だ。

(……あの娘は高いところが好きだからね)

なんて考えながらあの娘がいそうな木を転々と見ていく。
そしたら、

「やっと来たー!」

って上から声がした。
僕は眩しいものを見るかのように手をかざしながら木を見上げた。

「やあ英莉、待たせちゃってごめんね。」

英莉は悪戯っぽくニッと笑って得意のアクロバティックな動きで降りてきた。

「でもさっすが不二、あたしのいる場所すぐわかったんだねっ」

「君は高いところが好きだからね。」

にひひっと笑って嬉しそうに答えた君の手を取った。
そしたら英莉は顔をほんのり赤くして先ほどとは違う少し照れくさそうな甘い笑顔で繋がれた手を見ていた。

「じゃあ、行こうか。案内してくれるかい?英莉」

「うん」

先ほどよりも強く僕の手を握って僕を誘導してくれた。

森と反対方向へ抜けたそこには眩しい限りの黄色が広がっていた。
思わず目が眩むような錯覚に陥った僕を引き戻したのは、英莉の元気な声。

「綺麗でしょ」

そこにあったのは黄色い花々に負けないくらいに輝く英里の笑顔。
ふっと笑って、英莉の頬をそっと撫でる。
キョトンとしている彼女に笑いかけて

「向日葵、だね。」

と言えば、うん!と君は元気よく頷いた。
そのまま黄色の中に駆けて行き花々と戯れている。
僕は後を追って行こうかと思ったけど、カメラを構えた。

「英莉!」

「ほえ?」

パシャッ

こちらをチラッと向き向日葵の中で笑っている。


この写真が色あせて輝かなくなっても
今は同じ笑顔がいつでも隣にある。
夏が過ぎ去っても、君は太陽に負けないくらいいつも輝いていて


あの黄色の中にいた君は、
隣で輝き続ける君は、




嗚呼、やっぱり僕の向日葵。



End
 

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