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□10月7日の満月
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雲がちぎれちぎれ行き交う空

その中に点々と光る無数の星

そして中心にはいつも輝く

大きく穏やかな…




睦言を浴びまくり、お互いに四肢を湿らせた後。
甘い余韻が誰にぶった切られる事もなく、その体温に身を任せていた。
そして項垂れるような熱さが温もりへと変わり果てたその頃。
急に隣にいる奴の視線が窓の外へと移動した。

「どうした?」

「…なあ、見てみぃや。国恵。」

上京して来て、もう何年も経つというのに変わらない関西弁に促されて、蔵之介の見ている方向へと視線を投げると、そこには…

「月……。」

まるで紺色の背景に丸く描かれた金色のそれ。
中秋の名月にも見かけることのできないような、美しい、月だった。

「ごっつ綺麗やな…。」

彼は愛でるかのような視線を月に注いでいた。
月もまた、彼に愛情を注ぐかのように白いキラキラとした光を浴びさせていた。

それを見た瞬間、不思議な感覚に誘われた気がした。何故だろうか、そんな事あり得る筈もないのに。



宇宙にも祝福された様な、そんな感覚。



「ん?どないしたん?国恵。」

月を見つめていた酷く整った顔がこちらを向く。
その瞬間、月は雲に隠れてしまった。

まるで、彼と同じ様に。


―ああ。だから、そんな心地になったのだな。 

今日は私の特別な日だ、これ位誘ってみても、許されるだろうか。

ハテナマークを浮かべた彼の問いかけに答える代りに、雲の奥へと隠れた月を見透かすように視線を空に戻して、こう言った。



「月が、綺麗ですね。」



End
 

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