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□鈍感なのも程々に
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ぴこぴこぴこ…

「………。」

無言の圧力。

ぴこぴこぴこ…

「……。」

スルーしているのか、はたまた気づいていないのか。

ぴこぴこぴこ…


「………おい。」


「何すか?」

どうやら確信犯だったようだ。

「何だ、では無い。何故、俺がお前の家に来ているのに放ったらかしにされなければならないんだ。」

今日は日曜日。部活の後、越前があまりにもしつこく家に来いと言ってきたので渋々来たのだ。

なのに。

家に来たら来たで、携帯やら何やらでゲームをやり始めた。
俺は放ったらかしにされた。
最初のうちはすぐ終わるだろうと思い持参していた本を読んでいたが、一時間経ってもそのまま。
流石に如何なものなのか。

俺はかなり苛ついていた。

それにも気づいている筈なのに、当の越前はキョトンとしていた。

「…何だ。」

「あ、すいませんっ。」

怒気を含ませた声音で言ったからか、越前は慌ててゲームをしまった。
しかしまだ何か引っかかるのか、俺の顔を見てくる。

「…何だ。」

あまりにも不思議だったので首を傾げて尋ねた。
そしたら事もあろうか、越前はふっと笑って。


「いや…部長可愛いなって。」


「…は?」

驚いた。
それはもう驚いた。
こいつの頭はどうなっているんだ。
先程の会話からどうしてそんな答えが出る。

「だって部長。俺に放ったらかしにされるの、嫌だったんでしょ?」

「ああ。誰でもそう思うだろう?」

やれやれ、という風にため息をついて越前は続けた。

「じゃあこれがもし、英二先輩だったら?」

「…どういう事だ。」

「英二先輩が一緒にいる時に、ゲームしかしないで部長の事相手にしてくれなかったら?」

「…別に、いつも通りだな。」

菊丸と二人で遊ぶという事は今まで無かったが、二人きりになった時は幾度となくある。
そんな時大抵はお互い違う事をしていた。話す時もあったけれど、俺と菊丸では共通の話題が少ないのだ。
その旨を伝えた。

「なら、俺ともそういう状況でも耐えられるんじゃない?」

「何故だ。」


「だって、俺と部長でも共通の話題なんてそんなに無いっすよ?」


それは、つまり。


「………っ!/////」

「やーっとわかったんっすか?」

笑顔を向けてくる越前がとても憎たらしい。
でもどうせ心の奥底ではそんな事、思えていないに違いない。


だって。



「部長、嫉妬、したんでしょ。」



そのくらい、越前の事が好きだから。







End

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