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□運命の赤い覚悟
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何やかんやあって、アタシはそこへ戻る事ができた。
監督はお決まりの決め台詞を残して去って行き、跡部は長太郎を連れて部室へと向かって行ってしまった。
その場に残されたアタシとアイツ。
「…宍戸。」
「…何だよ。」
不意にアイツの方に視線を投げてみたら、こっちをジロジロ見てやがる。
な、何だよ…怖いし、なんか緊張するじゃねえか。
そしたら手を取って
「凄い怪我しとるやん…。嫁入り前の女の子が傷つけたら、あかんて。」
『女の子』
そう扱われるのは何時ぶりだろうか。
そんな事を考えていたら、体がフワッと宙に上がった。
「え!?お、おい!」
いや、コレはマズイだろ。
アタシが怪我ばっかだから、配慮してくれたのかもしれねえけど。
何故、お姫様抱っこ。
「ん?」
「ん、じゃねえよ!お、降ろせっ!」
聞かないフリでコイツはそのままずんずんと進んで行く。
こちらとしてはたまったもんじゃねえ。
怪我に響かないように、細やかな抵抗を見せた。
「怪我、痛いんやろ?無理せえへんで。」
先程とは打って変わって、優しく低い声と穏やかな微笑みがアタシを劈く。
…こうなると、降りる気が失せるんだよ…。