夏目友人帳

□屋根の上
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夜、先生と俺はよく星を見に、屋根に降りる。
そこで話すことは、日常の何気ないことだったり、妖について教えてもらったり、内容は様々だけど。
でも、その時間は先生と俺の何気ない、それでいて大切な時間だ。

今日も先生と屋根へ降りる。

だけど、今日は犬の会のメンバー、中級妖怪の2匹やヒノエが先にいた。

先生は不機嫌そうだったけど、俺が笑っているのを見たら、まあいいか、と言っていた。

俺はというと、こうやってみんなで集まれるのが嬉しかった。

…酒盛りはうるさくて嫌だけど。

先生だって結局は、お酒で懐柔されて酔っ払ってしまうのだし。


でも、俺はこういう時、不安になる。

楽しい時は、一瞬で過ぎ去る。
そして暗雲は立ち込める。

不安の影は、何時でも俺の後ろをついてまわって、こういう時に忘れるな、と主張を始める。

そうだ、忘れてはいけない。

この愛しい時は、

この安らぐ時間は、

簡単にももろく、

あっという間に崩れ去って、

そして独りの時間がやってくること。

忘れては、いけない。


そして、こういうことを考えていると、すかさず先生は俺に言う、

また変なことを考えているのだろう、と。

そして俺は思うのだ、先生は、一人に戻ったら何を考えるのか、と。

あの龍の式のように友人帳を守るのだろうか。

それともやはり、妖を従えるのだろうか。

でもそんなことを思っていることはおくびにも出さず、なんでもないよ、と笑顔で言う。

先生はちょっと悲しげな顔でそうか、と言って元に戻る。

そしてポツリと言うのだ、くだらないことは考えるな、と。

ああ、先生のことが好きなんだな、ってつくづく思う。

そして俺はまた、この安らぎに身を委ねるのだ。
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