鬼灯の冷徹
□ねこになりまして。
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ここは天国。
仙桃の香る漢方薬店、極楽満月。
そこに、珍しい客が一匹――。
―白澤side―
「んなぁーおーぅ」
「欢迎光临ー…って、ね、猫…?」
黒猫だった。
ちょっと目つきの悪い猫だな、と思った。
「どこから来たんだい、この猫。とっても珍しいお客様だよ。」
ちら、と思ったのだ、誰かに似ている、と。
目つきの悪さ。真っ黒な色。
ふと背中を見ると…
「鬼灯の印…、て、ことは…。」
僕は、黒猫を見る。
黒猫も、僕を見る。
「んんなー」
「鬼…灯…?」
「なあぁーー」
ひときわ大きく黒猫が鳴いたところで、桃タロー君が入ってきた。
「あ!鬼灯さん、もう来てたんスね。白澤さん、鬼灯さんに協力して下さいよ!なんか、突然猫になったらしいっす!!」
「はあああぁぁぁぁああ!?」
―鬼灯side―
昨日はいつの間にか寝てしまったようだった。
あのアホ(閻魔大王)が無能なせいで、昨日終えるはずだった仕事が終わらなかったのは言うまでもない。
(さて、昨日の仕事を終わらせなければ…)
もそり、と布団から身を起こすが、何かおかしいと気付く。
視点がおかしい。
体が縮んでいるのか…?
手のひらを見ると、愛しいもふもふになっていた。
これは、つまり…?
「…にゃあ…」
猫になっているようですね。ええ、わかります。
とは言ってもこの姿ではペンなんて握れませんね、どうしましょう?などと考えながら、とりあえず広間まで歩いていくが、この姿のためかいつもより遠く感じる。
「んんなー」
「ん?猫?うわあ、黒猫じゃない!目つきも悪いし、まるで鬼灯君みたい〜……。」
そこまで言ってからこのアホ上司は周りを気にしだしました。何をしているんでしょうか。本人は目の前ですよ。
とは言っても、この姿でよもや私とは誰も思わないでしょうね、さてどうしたものか…
「あーー!!鬼灯様が猫になってるー!!」
おや、この声は、シロさん?
「ねーねー、鬼灯様なんで猫んなっちゃったの?何かしたの?」
「にゃ、にゃーなぁん(いえ、特別何もしていないのですが)」
やはり獣は話が早いですね、言ってる事が分かってくれて助かります。
「んなあ、にゃー、ななぁん、うにゃあなぁーにゃにゃん(そうです、シロさん、あのアホ大王に私が猫になったことを伝えてくれませんか)」
「ん?いいよー!閻魔様ー!あのねー…」
「…えぇっ!?本当!?あっ、確かに背中に鬼灯君の印が」
これで少しは融通が利きますかね。さて、あとは、直ちにこの奇病(?)を治さねば…。しかし、私にはわかりませんし…不本意ですが早く治るためにはあそこへ行くしか、…
「んんなー、なうあう。なあん、にゃにゃー(仕事しろ、低脳上司。私は天国へ行ってきます)」
「…だって!」
「はうぁっ!!…でも、鬼灯君、治るんだよねぇ…?」
「…にゃん(さぁてね。)」
――
そして現在に至るのであった。
「へぇー…突然、ねぇ。何か変なものでも食べたんじゃないのぉ?」
クスクス、と笑いながら白澤は言う。黒猫―鬼灯は、笑い事ではない、とでも言うように尻尾をパタパタとふっている。
「ん``ん``な``ぁぁぁ〜〜!!」
「あぁぁあ!分かったよ、ごめんって!!でも僕はそんな症状知らないし聞いたこともないからどうにもできないよ!」
そばで見ている桃太郎は思っていた。なぜ、会話ができているのだろうか、と。
だが、二人にとっての問題はそこではないようだった。
「にゃにゃあ、なおん」
「ううん、そう言われてもなあ…でも、その病気は気になるなあ、何かに応用できそうだし…どんなことが原因なんだ?何か心当たり、本当にないのか?」
「んんなぁ」
「う``う``ーん、よしわかった!!じゃあ、しばらく僕んちで暮らしてよ!!何とかしてみせるから!」
どうしてこうなった。桃太郎と鬼灯は思うのであった。
ここから鬼灯と白澤の同棲生活が始まったのだっt「んにゃあん!!(同棲じゃないです!!)」