鬼灯の冷徹

□しんじゅうはしんゆう?
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「鬼灯様って、白澤様と親友なの?」
「…はい?」

とある小鬼の一言から、私の考えが止まらなくなった。

******

「……。」
「…鬼灯君?ねえ、大丈夫、鬼灯君?」
「……。」

地獄の鬼のトップであり、閻魔大王の補佐官、鬼灯は、仕事も手につかなかった。
いつまでたっても、あの小鬼の一言が頭から離れず、絶えず思考が止まらない。
閻魔への制裁も忘れる程に考えが頭の中を支配していた。

「鬼灯君がぼーっとしている間に、儂、サボっちゃうよ!?」
「……。」
「…だめか…。」

様々な方法で鬼灯を元に戻そうと懸命だった閻魔だが、どうしてもダメだとわかったらしい。
どうしたものかと途方に暮れていた時、珍しい訪問客があった。

「你好ー」
「あっ!白澤君!!」

天国の住人で、漢方の名医、白澤だった。
そして閻魔がその名を口にした途端、鬼灯はバッとそちらを見た。
そして閻魔はそれに驚いた。

「ほっ鬼灯君!?」
「…はい?」

驚いて声をかけると、まるで今気づいたと言わんばかりに不思議な目をした。

「今までなんで反応しなかったの!」
「え、すみません気づきませんでした。」
「?何があったんですか?」

ちょうど良かった、と閻魔は、鬼灯がおかしいと白澤に相談を始める。
それを聞いていた鬼灯は、そんなことはないと反論する。

「少しぼーっとしていただけです、なんでもありませんもう大丈夫です。」
「少しって言うくらいじゃなかったよ!?」

それを見ていた白澤は、心配そうな顔をする。

「お前働き過ぎなんだよ、疲れてるんじゃないの?」
「心配しているんですか?気持ち悪い。」
「つくづく酷い奴だな。」

そしてしばらく言い合うが、やがては核心をつかれた。

「で、そんなに何を熱心にぼーっとしてたんだよ。」
「熱心にぼーっとするほど貴方のように暇じゃありません、ただ考え事していただけです。」

苦々しい顔をして言う鬼灯。

「そんなに何を考えていたの、鬼灯君?」
「いえ、なんでもないことです、本当に。」
「本当か〜?恋煩いか?ついに恋煩いか?」

予想通りの質問攻めに、うんざりした顔をしたが、言わなければ後々が面倒であろうと、ついに観念した。

「…茄子さんに」
「「茄子君に?」」
「…白澤さんが、」
「「ん?」」
「…親友なのかと、聞かれました」
「…それで?そんなことで悩んでたの?いつものお前ならあっさり否定するじゃん、どうしたんだよ?」

いつもとは違う鬼灯の反応に、白澤や閻魔はらしくないと豪語する。
鬼灯自身も戸惑っているようで、何か納得いかない顔をしていた。

「…親友ではないのです、そこは間違いようがなく。」
「あっそう…。」
「ですが、…」
「「?」」

何かを言いかけて、そのまま黙りこくってしまった鬼灯に、二人は疑問符を浮かべる。
しばらくすると、白澤を呼んで、内々に話をする、と、恐怖で引きつっている顔の白澤を部屋まで連れて行ってしまった。
閻魔には、しっかり仕事をしておけ、という威圧付きだった。

******

「…で、何なんだよ…?」
「…白澤さん、なんだか分からなくなりました。」
「は?」

そして鬼灯は、白澤に悩みを話し始めた。

きっかけは、小鬼の一言。

「鬼灯様って、白澤様と親友なの?」
「…はい?」

その日、書庫に巻物を取りに行くと、書庫整理をしていた”地獄のチップとデール”こと、唐瓜と茄子がいた。

「あ、鬼灯様だ!」
「鬼灯様お疲れ様です。」
「ご苦労様です、書簡整理ですか。」

せっせと働く二人の傍を通って、奥の棚で巻物を探す。
しばらく探していたが見つからず、二人の傍の棚へ探しに来た時、茄子に聞かれたのだった。

「…親友では、ありませんよ、断じて。」
「茄子、お前また変なこと言うなって!すいません、鬼灯様!」
「えー、でも、鬼灯様って、俺らには滅多に暴力は使わないのに、大王とか白澤様には使うなーと思ったから…。」

茄子はマイペースで変わり者故に着眼点や観察点が人と違う。
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