鬼灯の冷徹

□節分だってよ、鬼灯さん。
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「鬼はー外ーー!!」

「…節分だからって、私に豆をぶつけるのはどうなんですかね。」

「全部打ち返して言うセリフじゃないだろう。」

******

「よくいますよね、鬼だからって私たちに豆をぶつけてくる輩が。」
「…僕を見ながら言わないで。そのことは本当に悪かったって思ってるから、本当に。」

天国、桃源郷、うさぎ漢方極楽満月。
カウンター越しに向かい合う、白澤と鬼灯。
そして、置かれた枡一杯の、炒り豆。

そう、白澤はついさっき、鬼灯に豆を投げつけた。

今日は節分、豆まきの日。
現世では、鬼は外、と言いながら豆を撒き、福は内と唱える。
そして歳の数だけ豆を食べる…のだが。

「ごめん、ごめんって、許してよ、花茶入れてあげるから!」
「怒っていませんよ別に、勝手に勘違いしないで下さい、白豚。」
「やっぱり怒ってらっしゃる!激おこプンプン丸でいらっしゃる!」
「その程度では済まされません、激おこスティックファイナリアリティプンプンドリームくらいです。」
「相当怒っていらっしゃった!!」

そう、顔には出さなかったものの、鬼灯はわりかし怒っていた。
仮にも恋人のこの私に豆をぶつけるとは、さらにそれだけではなく、鬼は外だと?一体全体、こいつは正気なのだろうか?と。

此方はせっかく、白澤に会うために仕事を終わらせて(閻魔大王に
押し付けて)来ているというのに。

「ねえ、鬼灯、僕が悪かったよ、機嫌直して?なにか飲む?」
「…せっかく」
「ふえ?」
「せっかく仕事を終わらせて急いできたというのにこの仕打ち…」
「あああああごめんなさい!ごめんなさい!!なんでもする!何でもするから許して!!!」

瞬間、鬼灯の纏う空気が変わる。
白澤は反応がない事を不審に思い、下げていた頭をそろりと上げた。
そこには―

―にやりとした笑みを浮かべる鬼神がいた。

「!?」
「―何でも、と、言いましたね。嬉しいです白澤さん、その言葉が聞きたかったです。」
「へあ!?!?」

そう言うが否や、鬼灯は白澤を横に抱えて店の奥に歩き出した。
横からは、鬼だの鬼畜だの言っているが、鬼ですからと一括して答え、部屋の鍵を閉めた。

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