鬼灯の冷徹
□ばれんたいん、ですか。
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地獄ではチョコレートの受け渡しは禁止されている。
賄賂にあたるからだ。
しかしこっそり渡すものも少なくない。
…賄賂にならなければいいですが。
なったらシめます。
とはいえ、そんなことだから自分に渡すものはほとんどいない。
いや、ダメ元で渡してきたりする者もいる。
一番厄介なのは、部屋や机に、私がいない間にこっそり置いていく者だ。
受取れないからこそ面倒だ。
こういうのは処分しようとすると大王とかがうるさいから、どうしようもない。
結局大王の孫に、とあげてしまうのがオチである。
いつものことだ。
今回は、私は1日デスクワークと言うことで、少しは減るかなと思っている。
そんな折、メールが届いた。
from:白澤
『今、仕事中?』
あの男がメールでこんな事を聞くなんて珍しいことだな、と思いながら、何を企んでいるのやら、とも考えてしまう。
to:白澤
『はい。』
さっさと打って、仕事に戻る。今日中に終わらせなければ、明日に積み重なるだけだ。
しばらくすると、またメール。
from:白澤
『忙しいのか?ちょっとだけ、こっちに来て欲しいんだ。
あ、時間は取らせないから!』
ほら出た。こいつ何を企んでいる。
さっさと吐け。
今思ったことをそっくりそのまま送ってやろうかとも思う。
to:白澤
『生憎今日中に終わらせなければならない仕事が山積みです。また今度にするか、貴方が地獄に来たらどうですか。』
用事があるなら出向いてこい。
パチン、と携帯を閉じ、机に置こうとした瞬間、携帯が鳴る。
これでは仕事にならない。
from:白澤
『お願い!!ちょっとでいいんだよ!ほんとにちょっと!!
今日じゃなかったら意味が無いし、そっちじゃ無理なんだよ!』
うるさい男ですねえ、と1人つぶやく。
このままではずっと鳴りっぱなしだ。仕事もできやしない。
仕方ない、出向くか。
to:白澤
『わかりました、今から行きます、だから煩くしないでください。』
ぱたり、と閉じてため息を吐く。
ああ、仕事は残るしチョコはのっているだろうし…。散々だ。