雑木林
□こっち向いて(仮)
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鬼灯は本を読むのが好きだ。
暇なとき(殆ど無いけど)や空き時間は、何時も手に何かしらの本を持っている。
合理主義的なアイツらしい。
今だって、持っている。
…僕が、傍に居るのに。
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「…む、メールですね…いつの間に。」
今日も忙しい鬼灯は、執務室の机で判を押している。
よくもまあこんなに仕事が湧いてくるものだと思いながら、迅速に判断を下す。
これからあと一件、裁判もあるのだった。
そんな忙しさから、メールに気づかない事も多々あった。と言うか、音やバイブがうるさいので、サイレントマナーにしていて気づかない。
今日も、ふと集中を切らして携帯をちらと見ると、光が瞬いていた。
ぱかりと二つ折りの携帯を開き、気分転換を兼ねてメールを開く。
発信元は、天国のアイツ。
『from:白豚
鬼灯、明日休み?
やっぱり、仕事忙しいか?
もし休みならこっち来いよ。』
珍しいお誘いですね、と独りごちる。
『to:白豚
珍しいですね。
何かいい酒でも入ったんですか。
休みを取ってもいいですが。』
とっとと打って、携帯を閉じる。
そしてまた暫く、判を押す。
ちら、と時計を見ると、裁判がもうすぐだ。そろそろ法廷へ、と腰を上げる。
携帯を開き、メールを確認する。あの男のことだ、きっとすぐ返してきたのだろう。
時間を確認したが、やはり鬼灯が返してから差があまりなかった。
「…暇なんですかねえ、あの男は。
あれでは弟子が苦労します。」
『from:白豚
いや、休みだったらだから!
忙しいなら、いいから!
休みたいなら、別にいいけど!!』
だが、文面から感じられる気遣いに、思わずクスリとしてしまう。
顔まで容易に思い浮かべられて、可笑しくなってしまった。
そんな顔で法廷へ出たものだから、大王は驚いた。
「ほ、鬼灯…君…。」
「?はい?…ああ、すみません、判子を押すのに集中していました。今から準備しますので。」
「いやね、君、そうじゃなくて…!」
何故かあわあわと手を振る大王に、鬼灯は疑問符を浮かべる。