雑木林

□(未定)
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先生、

先生は気づいていたかな。

俺が、

あの人を、心から恐怖していたこと。

知っていたかな、

俺の、

闇を知られていたこと。


*******

「んー…、あっつい…。」
「なんだ夏目、こんなんでへばってんのかぁ?まだまだ暑くなるぞ!」

今日もいつもみたいに、北本達としゃべりながら帰っていた。
日差しが強くて、シャツなんてすぐに汗で濡れてしまった。

「アイスでも食べようよ。」
「おー!夏目、おごれよー!」
「自分で買えよ…」
「北本ー!」
「西村、うるさい。何にしようかな…」
「お、お前ら…!!」

こういう風に帰るのは新鮮で、楽しい。
やったことなんてなかったから。

先生はいつも僕の中にある闇を見て、心を痛めているような顔をするけど、それは嬉しいけれど、僕にとっては複雑なんだ。
先生の心を傷めさせる俺が、弱い俺が、情けなくなってくるから。

でも最近はそんなことも少なくなって、先生からの心地よい温度に甘えて、周りのみんなの優しさに支えられていた。

そんなある日、僕の平穏は崩れた。

「おやおや、今日は、夏目貴志君。」
「…っ、的場、さん…。こ、今日は…。」

どうしてこんなところにいるのか。
不安と緊張が顔に出てしまう。

「夏目、知り合いなのか?…大丈夫か?」
「顔色悪いぞ?」
「あ、ああ、大丈夫…。」

にこにこと人の良い笑みを浮かべながら、じっとこちらを見ている。
こんな時に先生は何をしているのだろう…。

「せっかくですしお話を、と思うのですが?」

嫌な予感しか、しませんが。
だが、ここで逆らえばどんな強行手段に出られるか、わかったものではない。
この人はいつだって奇想天外、なのだ。

「…北本、西村、悪い…。また明日、会おう。」
「夏目!無理するな、もし嫌なら俺たちが…」
「そうだぞ、お前の力になるぞ。」

友達とはこんなにも良いものか。
二人の親切と友情が嬉しく、くすぐったい。
だがしかし、今はそんな余韻に浸っている場合ではない。
もしも二人が手を出したら、どんなことをされるか…。

「あ、ありがとう…、でも、大丈夫だから。じゃあ、気をつけてな。」
「夏目!」

早々に背を向けて歩き出す。
何を話す気なのだろう。
不安しか、今はない。

「いいんですか?…お友達と一緒でも、私は構いませんが。…ああ、そういえば、今日はあの妖はいないんですね、用心棒、だったのでは?」
「…学校だったので」
「ああ、さすがに学校の中にまでは付いて行かないということですね。」

なぜか嬉しそうだ。
やはり、何を考えているのか、わからない。

「で、話とは何ですか。」

牽制を交えながら睨みつけ、手っ取り早く済ませて帰ろうと話を促す。

「ふふ、そんなに睨まないで下さい、別に取って食いませんから。」

この人が言うと冗談には聞こえないな、と思いながら聞き流す。

「まあ、貴方に確認を取ろうと思いまして…。」
「確認…?」
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