雑木林

□近未来想像
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こぽり、と気泡が上へ抜けていく。
自分はいつになったら、この巨大なカプセル水槽から出れるのだろうか。
体に繋がれたたくさんのコードが外されるのはいつの日なのか。

それとも、もう二度と来ないのか。

この間天井ハッチが開いたときに見た、あの時のような綺麗な水色の空の下を、また縦横無尽に歩いてみたいものだ…。

そこまで考えたが、今の自分の状況を考えると大いに無理なことがうかがえる。

この大量に身体に繋がれた配線がなければ、精神の安定した維持ができない。
この身体の浸かっている液体がなければ、闇へと堕ちてしまう。

そんな自分が青空の下を縦横無尽に、など、到底無理な話であった。

「やあ、気分はどうだい?光忠。」
白衣をまとったいかにも狡猾そうな男が、張り付けたような笑みで手を振りながら近寄ってくる。

いつものように気分を訊かれる。
自分が頭で文章を考えれば、そのままカプセルの前に据えられたパネルへ文章が出てくるようになっている。
そのため、頭にも配線が繋がっているのだ。
気分を聞かれたので、『別にいつも通りだよ、特にどこも違和感はないよ。』と考えておいた。

別にすべてがテキストになって画面に出るわけではなく、発音しようとする文字を判断して出しているらしい。
優秀なんだな、と思う。

僕の答えを確認してから、彼は
「そう。君は素直に答えてくれるし、なんでも協力的で助かるよ。」
と言い残し、手に持っていたパネルを操作して、何かをしきりとチェックしていた。

その様子を眺めながら、僕は本丸で一緒だったみんなを思い浮かべ、素直じゃなくて協力的ではないだろう人物を、ゆっくりと頭の中へ思い浮かべた。
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